毎日、アルゼンチン君とだいたい夜10時か11時からビデオ通話をしていた。

週末は明け方の6時まですることも。


私の週末はだいたい出かけるので、睡眠時間2時間で出かけたりした。(←大学生か!)


また私の仕事の昼休憩に、ビデオ通話をすることもあった。


何をそんなに話すことがあるのか、

だいたい楽器と読んだ本の話、あとは世間話だが、

とにかくアルゼンチン君とは話が尽きない。

すっごく仲が良かったし、

ずっと笑って何かを話していた。




そんなある日の日曜日、

私は近くの銭湯に行こうとしていた。




夜9時前後、


アルゼンチン君からメールが。



「メイ、何してるの?」




「銭湯に行く準備。もう出るよ。」




「僕もメイと一緒に温泉に入りたいなー!」



出た。


やっぱりこれ、言うよね。





「気をつけていってらっしゃい。

帰ったらビデオ通話しようね。

メイ、愛してるよ!」





アルゼンチン君は私のことを、

スペイン語で「愛してる」と言うようになった。


スペイン語には、

「愛してる」が2種類ある。





①「Te quiero.」は、

英語の「I love you.」と類似している部分があり、


付き合い始めの恋人間はもちろん、

家族間や、友達同士も使う。


日本語で言う「大好き」に近いのかな。







 そして「Te amo.」は、

付き合い始めのカップルではなく、

「本気で君を愛してしまった。」場合、


Te quiero.」から「Te amo.」に切り替わる。



「Te amo.」は、家族間や友達同士では使わない。

完全に、本気の恋人同士か、夫婦のみ。





アルゼンチン君は

「Te amo.」と言ってくれるようになった。





「私も愛してるよ。また後でね。」





「でも今、ちょっとメイの顔が見たい。」



この時、アルゼンチン君はビデオ通話をしたがっていた。



しかし私は出かけるつもりだったので、



「なるべく早く帰ってくるね。」



と答えた。



しかし私はすぐ銭湯に行くつもりが、ダラダラ本を読んだり、楽器を弾いたり過ごしてしまった。







そこからまたアルゼンチン君からのメールが。



動画だった。



アルゼンチン君は動画も好き。


だいたいアルゼンチン君が大好きな料理と楽器演奏の動画。




余談だが、


アルゼンチン君は、外出先の野外での動画を送ってくることはない。


レストランや本屋の動画などはあるが、

野外の街の風景はほとんどない。



理由はわかりますか?



「危険だから。」



アルゼンチンは南米特有の強盗が多く、スマホで動画撮影をしていると狙われる為、危険だそうです。


特にアルゼンチン君の住むブエノスアイレスは治安が悪く危険らしい。




話は戻り…

アルゼンチン君は動画で


必ず私の名前を呼び、


英語で話していた。




そして最後はスペイン語、たまに英語で、

「メイ、愛してる」で動画をしめる。





送られてきた動画は、

アルゼンチン君は自宅キッチンで、日系マーケットで買った豆腐を料理し、

英語



メイ、見て!

おいしい…。


ん?おいしい?

豆腐、味がしないよ!」

と笑っていた。

身長190センチのアルゼンチン君が、かなりの頻度で、台所で頭をぶつける姿もかわいいかった。




私は、そのアルゼンチン君が豆腐を食べる動画を見て、

笑顔になった。





しかし…



それから20分後…。



また動画が送られてきた。



本を読みながら、

開いた2回目の動画。


送られてきた動画に、

私は凍りついた。

改めて書きながら…ホラーみたいやな。














それは、

ビデオ通話間での

性行為を誘うものだった。


サイバーセックスっていうのかな?

よくわからない。

もう悲しくて、単語も調べられない。







今までアルゼンチン君は私に



「毎晩、メイと一緒に寝たい。」


「メイの子供が欲しい。」


とは言うものの、


エッチな話や、

もちろんビデオ通話間での性行為を誘うことはなかった。








しかも…



私とアルゼンチン君の会話は

95% 英語。


アルゼンチン君の日本語は、

会話となると難しい。


日本語では、

おなかすいた。」

「今日、ブエノスアイレスは晴れています。」

「今日は何をしましたか?」

「僕は本屋へ行きました。」とか、

その程度で、



通常の流暢な会話は英語になる。



しかし…



最悪。


アルゼンチン君は、

性行為を誘う動画で、



最初の挨拶以外、


日本語を話していた。