モロッコ系フランス君は、

実は仕事中なのだが、留守番業務の在宅勤務の時間に、私とビデオ通話をしている。


おもしろいというフランスのシットコムを観ながらフランス語を英語で同時通訳してくれた。



同時に、数回かかってくる同僚からの電話には、スペイン語を話している。 


英語、スペイン語、ポルトガル語をビジネスクラス並みに話すが、彼の母国語はアラビア語とフランス語。



カッコ良すぎる。



それにしてもモロッコ系フランス君が観せてくれたフランスのおもしろ動画は、世界一のおもしろさだった。





くやしいが、アメリカ、日本の負けかもしれない。



フランスよ、なかなかやるな。




悔しいので、アメリカのおもしろ動画をいくつか対抗して送って観せたら、

腹を抱えて笑ってくれた。




「僕とメイ、

笑いのツボが同じだね!」




確かに!

笑いのツボが同じ男性って素敵だよね。



私がモロッコ系フランス君に紹介した、アメリカのおもしろ動画をいくつかアメブロに載せるけど、

最後の動画はかなりヤバイかもしれない。





この動画はドン引きされたらどうしようと思いながら一緒に観たが、


「さすがアメリカ人だ!」と笑ってくれた。






気づいたら、フランス時間で午後3時過ぎ。



「ああ、メイと爆笑してたら、お腹すいた!」





「あ、お昼ごはん食べてないよね?

お昼休みは?」





「一応、適当なところで休憩は取れるよ。

メイはアラブ料理が大好きだから、メイにおいしいシャワルマのお店を見せてあげたいんだ。」





「見たい!」





モロッコ系フランス君は、スマホを片手に家を出た。


階段で、同じマンションに住む、近所の老婦人に会う。

笑顔でフランス語で会話をする。

私はフランス語がわからなくても、

モロッコ系フランス君は、こちらの老婦人に可愛がられているんだなとわかる。




「何て話してたの?」





「この前、あのおばあちゃんに夕飯のおかずを頂いたから、おいしかったよーってお礼を言ってたんだ。」




やっぱり。





シャワルマはおいしそうだった。


ついでに持ち帰りで何かを注文していた。

先ほどのおばあちゃんへのお土産らしい。



家に戻る途中に近所を説明をしてくれ、

「あっちにクリスマスマーケットが…あ!」






「どうしたの?」

 





「メイにクリスマスマーケットを見せる約束をしてたんだった!」





「ああ、気にしなくていいよ。

また今度ね。」


 



「でもクリスマスイブは今週末だよ。

メイはクリスマスが近づくと忙しいよね?」





「そんなに忙しくはないよ、

クリスマスイブは教会に、

クリスマスはホームパーティーをするから、お客さんが来る。

イスラム教徒の親友も来るよ。」





「じゃあ今からクリスマスマーケットに行こう!」





「え?

仕事は?」





「まだ休憩時間だよ。」





「休憩時間はあとどれくらい残ってるの?」




と話していたら、すでに彼はタクシーをつかまていた。





タクシーの中で、

「モロッコ系フランス君は、モロッコとフランスどっちが好き?」





「当然、モロッコだよ。

比べ物にもならない。」






「モロッコは美しいよね。

行ったことはないけど。」





「メイはアラブ圏が大好きなのに、モロッコには来たことないよね。」





「カサブランカはとても美しいよね。」





「うーん、カサブランカは大したことないよ。

僕の故郷の写真を、後でメイに送るね。」






そして宝石箱のように美しい、フランスのクリスマスマーケットに着いた。


※写真はイメージです。



本当にモロッコの方が美しいのかな、

というくらいフランスのクリスマスマーケットは、夢の世界のようだった。





モロッコ系フランス君は、

「メイに見せてあげたい。」

と言いながら、食べ物を2つ購入。




「見て、おいしそうでしょ!」

と嬉しそうに見せてくれ、一口食べるが、どちらも一口ずつ食べた後は、袋にしまっていた。





「ねえ、実はお腹すいてないんでしょ?

さっき大きなシャワルマ食べてたもんね。」





「あはは、バレたね。」





「私に見せようとしてくれたんだよね。

私のことは気にしなくて良かったんだよ。

ありがとうね。」





「持って帰って夕飯にするから、メイこそ気にしないで。」





そう優しく言いながら、彼はホットチョコレートを購入した。





「だから無理しないでいいんだよ。アセアセ






「これは無理してないよ、甘いものは別腹だから。」





そう言ってホットチョコレートを嬉しそうに飲むイケメン。



やはりイケメン+ホットチョコレートは、かわいすぎる。





「フランスは美しいね。

ずっとフランスに住むの?」





「いや、いずれはモロッコに帰りたいよ。

フランスよりモロッコの方がずっと美しいから。」




↑だからホンマかいな。





「モロッコはそんなに美しいんだね。」





「モロッコは美しいよ、大好きな故郷だ。

帰りたいよ。」





そう言って、夕焼けのクリスマスマーケットで笑うイケメン。


ああ、イケメン+笑顔+夕焼け+ホットチョコレートは、本当に絵になる。





「クリスマス休暇が終わったら、僕も休暇をとる予定。

多分、1月には。


その時はビデオ通話でメイにモロッコを見せてあげるね。

きっとメイも、モロッコの方が美しいと言うよ。



…あ、メイ!」





「どうしたの?」





「…スマホの充電が切れそうだ。」





「え!?

お仕事がヤバイよね。

早くお家に戻って。」





「仕事は大丈夫だけど、もっとメイに見せたかった。」





「もう充分、見せてもらったよ。

ありがとう。」






「僕もありがとう。

ああ、もう日本は深夜になるよね。

素敵な夢を見てね。」




夕焼けの中で笑うイケメンがドラマみたいで素敵すぎる。






その翌朝、目が覚めたら、

モロッコ系フランス君からいくつか故郷モロッコの写真が送られていた。




彼の写真でははなく、ネットの写真を載せるが、

「フランスよりモロッコの方が美しい」という彼の主張は本当だった。