お子さんに跡をつがせますか? | 医療・介護系の転職なら(株式会社メディカルブレーン)

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医者になっていなかったらどんな仕事していたか、と考えることがあります。どんな職種についていても、いろいろな提案をして回りをあきれさせ、「みんなわかってくれないんだよなー」とかブログに書き込んでいるんだろう、と想像してみたり。

 子どものころの夢は小説家でした。「医者をやりながら小説書く人もたくさんいるよ」などと言われ、親族に医者が多かったこともあって医学部に進学したのですが、「なってみたかった」という意味では、水族館の館長にも憧れていました。

 今も水族館や動物園は大好きですが、なぜ「館長」になりたかったかと言うと、子どものころに江の島水族館をその当時の館長さんに案内されて楽しかった思い出が強烈に残っているからです。おそらく父の患者さんだったと思われる(子どもの頃なのでそのあたり記憶があやふやです)館長さんが、大人なのに子どもの私が楽しい水族館で楽しくお仕事をしている、というのが驚きだったのでしょう。

 そして医者になって二十数年がたち、いまは(経済的には豊かではありませんが)楽しく開業医をしています。臨床医療の楽しさ(同時にその怖さも、ですが)が分かるようになるには、ある程度は経験が必要だと思いますが、開業はつらさの向こうに、自ら作り上げる仕事の楽しさがあるように感じています。

 イメージとしては、ロッククライミングが近いでしょうか(やったことはありませんが…)。手を放せば落ちる、後に戻ることはできず前進するしかない、岩棚で一息ついて達成感を味わう、といった楽しさです。そうそう人におすすめはできませんけど。あ、もちろん順調な開業されているドクターの場合には、そんな感じではないのだと思います。

 「もし私に子どもがいて、子どもが医者になっていたら、クリニックは継がせただろうか」──。継承開業している医院の話を聞いたり、医歯薬系予備校のダイレクトメール(結構送られてきます。そういう年代なんですね)を見ると、そんなことを想像したりもします。

 開業が軌道に乗るまでの吐くようなつらさは、子どもには決して経験させたくない。だからこそ、一度できた地盤を手放すのはおしいから、自分の医院をわが子に継がせたい。そう思うのでしょうか。もちろん現実には、クリニックがなくなってしまったら患者さんに迷惑がかかるから、という理由で継承を選択することもあるのでしょう。

 そう言えば、むかーし、医院の息子さんで医者になっていない方とのお見合い話が来たことがありました。すでに眼科医になっていた私に「科を変えて継承してほしい」というお願いでびっくりしました。私だったら閉院するか、第三者に譲渡すると思います。血のつながった親子の継承であってもなかなか難しいようで(親子だからこそ、かもしれませんが)、先代がまだ仕事をしていると、入り口まで別にしている医院も見かけます。うまくやっているところは、きっと双方ができた方なんでしょうねえ。

 親族の中で開業医であったのは祖父母だけなのですが、祖父が早く(私が産まれる前)に亡くなり閉院しています。跡をつがせたかったのか、おじいちゃんに聞いてみたかったなあ。

日経メディカルブログ:目黒瞳の「オンナ開業医よしなしごと」より抜粋