偽物三葉虫の作られ方とその存在理由 | 化石屋のブログ

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ブログの説明を入力します。このブログではモロッコ産化石の現地情報を紹介しています。

モロッコで三葉虫がもっとも産出する地区はAlnif郊外に在るIssoumour山周辺です。80年代に三葉虫の採取がもっとも盛んになり、当時Atchana辺りには常に100人程の原石採掘者が山で採掘していました。 しかし時代とともに掘りやすい場所は枯渇し、現在では深く岩盤を掘り進まないと化石の眠る地層には到達しなし危険な作業と成っています。
その様な理由から今では多大な労力と危険が多いこの産地では原石採掘者の数も減り続けています。

 では原石採取で生活していた人達は現在はどうしているのでしょう? 元々砂漠地帯ですから職業と言っても遊牧くらいしか無いのです。 元の遊牧に戻った者、都市部へ出稼ぎに行った者、そして慣れた化石商売... 土産物用などに需要が有るためイミテーション化石を造る者も出てきました。
買うのはもっぱらモロッコ国内の観光地の土産物屋ですが、その土産物屋ルートから買い付けNetでも本物として売られています。

 普通の化石工房とこの様なイミテーションを作る過程は全く別で、現地では勿論イミテーションと知って売買していいます。 ただ中には悪質な土産物業者がおり本物と称して売っている事が有ります。 しかし土産物屋に並ぶほど本物の完体化石は出土しませんので、モロッコへご旅行の際には道端の土産物屋に本物は無いと心得て下さい。

 では画像とともにそんなイミテーションの造られ方を説明いたします。
この撮影時にこの工場の人は私が撮影する事を拒みませんでした。 それは彼等は別に人を騙すためにイミテーションを作っているのでは無く、普通に土産物を作っているのですから何も問題は無いわけで、普通に手順も教えて頂きました。

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有り得ない状態の異種類三葉虫の6匹セットのシリコン型です。 そこが土産物な訳ですが...

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製造過程は化石が産出する土地の岩石に、同質の泥と接着剤の混合物で型取りした三葉虫を貼り付け塗装をします。

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DicranurusやCrotalocephalus、Phacops、Zlichovaspis等Atchanaで採取出来る化石の詰め合わせイミテーションの完成です。 黒く着色してありますが、塗料の質が悪いのか時間と共にすれて地の色が出て来たりしています。この5匹セットバージョンの他にも3匹セットや単体とバリエーションも有ります。

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こちらはDicranurus単体。 本物は大変高価な化石ですが、人気が高い為多く作られています。またこれが良く出来ていたりします。

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集合偽物セットと同じく型抜きします。 母石と同質ですから本物の化石に見えますが、どうしても接合部が怪しい... そこでどうするか? と言えば画像の様に偽部分のギリギリまで細かく母石を釘で削ります。

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本体に塗装して完成すると、どこから見ても本物の様ですね。

ただ立体的にフライング・フィニッシュ仕上げとかで削り出したりはしません。なにせ上部半身しか無いですから、裏側は見せられない訳です。 この辺りも真贋を判別する基準と出来ます。 フライング・フィニッシュ仕上げの物には型取り物は無しであると。

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型取りするので全ての偽物が同じ型に成ると思っていましたら、これを御覧下さい。このDrotopsも全てイミテーションや作り物です。数種類の型が有り、型抜きした材質が固まる前に少し歪めてやるだけでこの通り、何十種類もの標本に... 

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こちらはまた別の過程で作られる土産物で、頭部や尾板しか出土しなかったDrotopsに不足部分を彫刻した物です。 三葉虫は採取時につねに全体が有るわけでは無く、頭部や尾部しか残っていない事が殆どです。 それら欠片化石も捨てられるのでは無く、この様に欠損部分は人工的に修復し着色されて土産物屋に並びます。

頭部と尾部に対して胸部の質感が違うのが御覧頂けるでしょうか? 彫刻し着色した物は良く観察すれば判ります。

これらはカサブランカやマラケッシュの土産物屋安価に売られており、土産には丁度良いかも知れません。