しかし、良いことばかりはないもので、炬燵にもぐっていると快適すぎて動きたくなくなる。
仕事のために腰をあげて書斎へ行く決心がなかなかつかない。
これは妻とて同じことなので、夕刊をとりに行ったり、お茶を入れたりするのを、二人で互いに押しつけあったりする始末となった。
そのうちに長男が幼稚園に入る頃になり、こんな風に冬を過ごしていると子どもの活動性を阻害すると思い(自分の子どもの頃のことはすっかり棚上げしてこう思うのだから、親というものも実に勝手だ)、それ以来今日まで、炬燵はしまいこまれたままになっている。
今でも寒くなってくると、ぼくは「炬燵を出そうよ」と言ってはみるのだが、妻が子どもの教育上の理由で頑として拒絶するので、ぼくの炬燵とのつきあいは、正月三賀日の和室だけに限られている。