さて過去の2回の記事で、尿路結石の疫学(尿路結石は一般的な疾患である)と尿路結石の成因(発生メカニズムはまだよくわかっていないが、尿が濃縮されている状態が続くと尿路結石ができやすい)のお話をしました。
今回は運悪く尿路結石ができてしまった場合の治療法についてお話しましょう。
治療法と言いましても結石のサイズが小さければ自然排石が期待できますので、およそ8割以上の患者さんには「一番いいお薬は水分摂取ですので水分をしっかり飲んで、しっかり運動してください」という説明をすることになります。ただし、自然排石が期待できる結石のサイズは8mmぐらいまでです。
時に患者さんより「先生、結石を溶かす薬なんかないんですか?」と質問を受けますが、
尿酸結石やシスチン結石のようなごく一部の結石には溶解療法が可能ですが、
尿路結石の80%以上を占めるカルシウム結石には石を溶かす薬はなく、
物理的に排石するまで痛みなどの問題が残ることになります。
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残念ながらサイズの大きな結石、またサイズは小さくても自然排石しない結石に関しては
泌尿器科的な治療が必要になります。
ただし、昔と違って最近の尿路結石の治療の中心ははESWL(体外衝撃波砕石術)で、
体に傷をつけることなく、うまくいけば日帰り手術でも行うことができます。
現在ESWLのみで90%以上の尿路結石は対処可能ですが、ESWLのみでは対処不可能な結石もあり、
その場合にはTUL(経尿道的砕石術)PNL(経皮的砕石術)といった内視鏡を用いた手術を、
さらにごくまれには古典的な切石術という開放手術(体を切って石を取り出す手術)が必要になることもあります。
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最後に現在の尿路結石に対する治療の主流であるESWLに関する余談をいくつか。
ESWLが保険診療の対象になったのが1988年でまさに私が研修医になった頃でした。
(それ以前から一部の施設では保険外治療としてすでにESWLは行われていましたが、
1回50万や100万という相場であったと記憶してます。)
当時はまだ第一世代の機械でスライド右上の写真のようにバスタブにつかるような形で、
大学で始めて見たESWL治療はまるで”おサルのかごや”に乗っかるような感じで患者さんがバスタブに運ばれていったのを印象的に覚えています。(現在はドライタイプで、機械の性能もどんどん向上しています。)
このESWLの導入により患者さんにとっては以前のような内視鏡治療や開腹手術をしなくても
尿路結石の治療が出来るようになったという点で非常に有益なことであったと思うのですが、
我々の世代以降の泌尿器科医にとっては尿管切石術という過去には泌尿器科領域で若い先生向けであった
手術の件数が少なくなったことにより、メスを持つ機会が大幅に減ったという(我々にとってだけの)デメリットも
もたらしました。(ぶっちゃけた話ですが、やはり手術は経験数が大きく影響しますので、若い頃になかなかメスを持つ機会がないということは修練の場を失うということにもなるのです。)

最後の最後に不幸にも尿路結石ができて、ESWLを受けなければならない時のコストの目安を。
現在のESWLの診療報酬点数が19300点です。(保険診療認可当初は23000点ぐらいだったと思います。
スライドに書いてある20000点はスライドを作った2001年当時の点数です。)
ですから、ESWLだけの診療費が193000円で、ESWLのための諸検査や当日の点滴他を含めると
21-22万円ぐらいになると思われます。
(ゆえに、3割負担の方で6-6.5万円ぐらい必要とお考えください。)

次回は尿路結石症に関する最終回として、「尿路結石の再発と再発予防について」を予定しております。