定額貯金の相続~預貯金の「例外」→遺産共有~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
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※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 父が亡くなりました。
  遺言はありません。
  相続人は兄弟A,B,Cです。
  遺産に郵便局の定額貯金があります。
  預金と同じように,分割承継となるのですか。


誤解ありがち度 5(5段階)
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A 定額貯金だけは普通の預貯金とは別です。
  「分割承継」ではなく「遺産共有」となります。


【定額貯金の相続/遺産共有】
≪相続の基礎知識-法定相続≫≪相続;遺産分割-遺産分割協議≫
父が亡くなりました。
遺言はありません。
相続人は兄弟A,B,Cです。
遺産に郵便局の定額貯金があります。
預金と同じように,分割承継となるのですか。

→定額貯金だけは普通の預貯金とは別です。「分割承継」ではなく「遺産共有」となります。

預貯金は,原則的に,「債権」ですので,金額を法定相続割合に応じて「分割」することができます。
しかし,定額貯金だけは別とされています(判例後掲)。
「可分」ではない,という解釈→「分割債権」(民法427条)とはならない,という思考回路です。
「可分」ではない,と解釈する理由は,「一定期間は据置にする」などの特殊な事情です。
結局,郵便貯金だけは,遺産共有状態になりますので,遺産分割協議(調停,審判)により,最終的な承継先(帰属)が決まらないと,払戻・解約ができないことになります。

[最高裁判所第2小法廷平成21年(受)第565号遺産確認請求事件平成22年10月8日]
 4(1) 郵便貯金法は,定額郵便貯金につき,一定の据置期間を定め,分割払戻しをしないとの条件で一定の金額を一時に預入するものと定め(7条1項3号),預入金額も一定の金額に限定している(同条2項,郵便貯金規則83条の11)。同法が定額郵便貯金を上記のような制限の下に預け入れられる貯金として定める趣旨は,多数の預金者を対象とした大量の事務処理を迅速かつ画一的に処理する必要上,預入金額を一定額に限定し,貯金の管理を容易にして,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図ることにある。ところが,定額郵便貯金債権が相続により分割されると解すると,それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる事態を生じかねず,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図るという趣旨に反する。他方,同債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記条件が付されている以上,共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい。これらの点にかんがみれば,同法は同債権の分割を許容するものではなく,同債権は,その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。そうであれば,同債権の最終的な帰属は,遺産分割の手続において決せられるべきことになるのであるから,遺産分割の前提問題として,民事訴訟の手続において,同債権が遺産に属するか否かを決する必要性も認められるというべきである。
 そうすると,共同相続人間において,定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては,その帰属に争いがある限り,確認の利益があるというべきである。

[民法]
(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

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