私に「兄弟」が増えたことになります。
その「兄弟」の戸籍を調べることはできますか。
誤解ありがち度 5(5段階)
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A 戸籍事項証明書(戸籍謄本)を取得できる人の範囲は決まっています。
単に「気になる」だけでは取得できません。
弁護士に依頼すれば取得できます。
【戸籍事項証明書の取得権者】
自分以外の人の戸籍の証明書は取得できないのでしょうか。
→配偶者,直系尊属,直系卑属は取得できます。それ以外でも「必要性がある場合」は取得できます。
原則的な形態,つまり,形式的な血縁関係によって取得が可能とされている範囲は戸籍法10条に規定されています。
<戸籍事項証明書の交付請求ができる者(基本)>
・戸籍に記載されている者
・戸籍に記載されていた者(ただし,誤記によって記載されていたものを除く)
・上記の配偶者,直系尊属,直系卑属
つまり,自分の戸籍についての証明書は当然取得できるのに加え,配偶者・直系尊属・直系卑属までは取得できるということです。
次に,このような形式的な血縁関係はない場合でも,一定の必要性に応じて取得が認められるケースも戸籍法10条の2に規定されています。
<戸籍事項証明書の交付請求ができる者(発展)>
・自己の権利を行使し,または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
・国や地方公共団体に提出する必要がある場合
・戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合
・弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士,行政書士が業務遂行上必要な場合
なお,「戸籍」の原本は昔は「カミ」でした。
そこで,情報を取得する場合は,コピーをもらう,という形でした。
「戸籍謄本」と呼んでいました。
現在は,戸籍の内容はオンライン化されていて,サーバー(コンピュータ)に入っています。
情報を取得する場合は,情報がプリントアウトされ,そのカミが交付されます。
「コピー」なら「謄本」ですが,これは「コピー」ではないので正確には「謄本」ではありません。
そこで,「戸籍事項証明書」と言います。
ただ,実質的には「戸籍謄本」と変わりはありません。
そこで,実務上,俗称的に「戸籍謄本」と古いネーミングで通ることも多いです。
[戸籍法]
第十条 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
2~3(略)
第十条の二 前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
2(略)
3 第一項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法 人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法 人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法 人を含む。次項において同じ。)、弁理士(特許業務法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法 人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
4(略)
【父が認知した子の戸籍事項証明書の取得(原則)】
家族が知らない間に,父が不倫相手との間の子供を認知していたようです。
私とは「兄弟」にあたる状態です。
この「兄弟」の戸籍証明書を取得することはできますか。
→お父様の相続開始後は取得できます。そのような事情がないと原則として取得できません。
いわゆる「半血の兄弟」ですね。「異母兄弟」とも言います。
確かに,非常に気になることでしょう。
お父様が亡くなった場合は,「相続人同士」となります。
遺産分割協議のメンバー同士となります。
お父様が亡くなった時点では,「相続人かどうか」という利害が具体化します。
この時点では,「兄弟」の戸籍証明書の取得はできます。
戸籍法10条の2第1項1号の「自己の権利を行使し・・・ために戸籍の記載事項を確認する必要がある」に該当するからです。
しかし,相続が具体化していない段階では,「必要がある」とは言えないでしょう。
【父が認知した子の戸籍事項証明書の取得(例外)】
「異母兄弟」の戸籍の証明書を取得する方法は一切ないのでしょうか。
なお,父は敵対的です。一切協力してくれません。
また,父は健在ですから,具体的に相続の問題が生じているわけではありません。
→何らかの調査を弁護士に依頼した,という場合は,弁護士から「兄弟」の戸籍証明書を取得することは可能です。
具体例としては,お父様の行った「認知」が真正なものかどうかが疑わしい,という場合です。
このような,多少曖昧な場合,ストレートに戸籍証明書取得の要件に該当するかどうかも不明確です。
「戸籍の記載事項を確認する必要がある」(戸籍法10条の2第1項1号)と即断することは困難です。
このような場合は,「親子関係の確認」などを弁護士に依頼すれば,結果的に戸籍事項証明書の取得は可能になります。
弁護士から「職務上請求」をすれば,「業務を遂行するために必要がある」として戸籍証明書の取得が可能なのです(戸籍法10条の2第3項)。
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