財産分与割合~2分の1ルールの例外~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
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多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 離婚の時の財産分与は2分の1なのでしょうか。
  専業主婦でも,でしょうか。
  別の割合となることはないのでしょうか。


あまりに「2分の1ルール」が浸透して,「他の割合」を知りもしない弁護士急増中!

誤解ありがち度 4(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 専業主婦でも原則2分の1です。
  例外は,特に高収入+妻(分与権利者)の貢献度が低い,場合。


【2分の1ルール】
離婚の財産分与ではどのような割合で財産を分けるのでしょうか。

→原則として2分の1ずつ,とされています。

かつては,「夫が給与収入を得て,妻が専業主婦」という夫婦が非常に多かったです。
そして,「財産形成は夫がメイン,妻の貢献度は低い」と考えられていました。
そのため,妻の財産分与割合は,2~3割程度,とされていた時期もありました。
しかし,その後時代は移り変わり,男女平等の要請が高まり,妻の貢献度が見直されてきました。
現在では,財産分与割合は,原則として2分の1ずつ,と考えられています。
夫婦共働きは当然ですが,専業主婦の場合でも同様です。
「家事従事による財産形成への寄与」(内助の功)が重視されているのです(裁判例後掲)。

[広島高等裁判所平成18年(ネ)第564号離婚等請求控訴事件平成19年4月17日(抜粋)]
夫婦が婚姻期間中に取得した財産は,夫婦の一方の所得活動のみによるものではなく,他方の家計管理や家事・育児等を含む夫婦共同生活のための活動の成果として得られたものというべきであるから,妻が専業主婦の場合の財産分与の判断においても,家事従事による寄与を正当に評価する必要がある。
本件においては,一審原告は,婚姻後,一審被告Bとの同居期間中,仕事に就いたことはないが,専業主婦として家事や育児に従事し,夫婦の共同生活の維持や一審被告Bの所得活動による財産形成に寄与してきたことが認められる。これらの事情のほか,扶養的要素も考慮すれば,財産分与割合は2分の1とするのが相当である。

【2分の1ルールの例外】
財産分与割合が2分の1とはならないケースはありますか。

→夫(分与義務者)が医師や会社経営者など,個人の特殊な能力や努力によって高額の資産形成がなされた場合は財産分与割合が2分の1未満となることもあります。

分与義務者(資産の大きい方;通常は夫)が特に高収入の場合は,分与割合が2分の1ずつ,とならない可能性もあります。
<財産分与割合が2分の1未満となるケース>
財産形成の要因が,「分与義務者の特殊な能力や努力」である
分与権利者(主に妻)の財産形成への貢献度が低い

【医師・弁護士などの資格業のケース】
夫が資格業であり収入が高く,財産分与割合が低くなるというケースはどのようなものがありますか。

→医師や弁護士が分与義務者,というケースが典型例です。

夫が医師であり,医院を経営していたケースの裁判例がございます(裁判例後掲)。
この裁判例では,夫が医師であり,妻が資産評価の半額として約2億円を請求しました。
裁判所は,妻の貢献を少ないと判断し,財産分与額は2000万円としました。
このように分与割合が低くなるのは,あくまでも,個別的に分与権利者(妻)の貢献度が低い場合のみです。
例えば,医師・弁護士のような資格による制限のある業務については,資格取得をした者自身の努力が財産形成の要因と言えます。
しかし,その受験勉強時代に既に結婚していて,妻が経済的・心理的にサポートをしていた,という場合は貢献度は依然高いと言えましょう。
特にバックアップ体制が充実していた場合,資格自体を財産(=将来収入を得られる状態)として,むしろ財産分与が高額化する場合もあります。

[福岡高等裁判所昭和42年(ネ)第288号、昭和42年(ネ)第289号離婚等請求控訴事件昭和44年12月24日(抜粋)]
財産分与の額であるが、前示の一審原、被告の婚姻継続期間、本件離婚に至った経緯、一審原告の年令、双方の財産状態、婚姻中における一審原告の医業への協力の程度、子の扶養関係(この点は後記第四、に認定のとおり)等諸般の事情を考慮して、金二、〇〇〇万円が相当であると認める。
 この点に関し、一審原告は、財産分与の額は夫である一審被告の財産の二分の一を原則とすべきであると主張する。なるほど、財産分与の本質は夫婦間における実質的共有財産の清算を中核的要素とするものと考えられるから、例えば、夫の財産が全部夫婦の協力により取得されたものでしかも双方の協力の程度に甲乙がないような場合であれば、財産分与の額を定めるにあたり夫の財産の二分の一を基準とすることも確かに妥当であろうが、本件においては、一審被告が前示の如き多額の資産を有するに至ったのは、一審原告の協力もさることながら、一審被告の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているのであるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠くものといわざるを得ず、一審原告の主張は採用できない。

【画家・作家という自由業のケース】
自由業で高収入のケースで,分与割合について2分の1ルールが用いられなかったケースはありますか。

→夫=画家,妻=童話作家という夫婦において,分与割合が妻6,夫4とされた裁判例があります。

この裁判例(後掲)は,前提事情が多少特殊です。
夫婦が両方とも画家・童話作家というアーティストとして活躍し,収入を得ていました。
そこで,当初より,それぞれの預貯金,著作権についてはお互いノータッチでした。
つまり,管理が分離していたのです。
居住する不動産だけが,(当然)管理を分離することができず,夫婦の共有財産となっていました。
通常であれば,不動産について,2分の1ずつとして分与することが想定されます。
しかし,このケースにおいては,一定期間,妻が作家活動を休止し,専業主婦となっていました。
2分の1ずつの分与とした場合,各自の財産形成について,妻は「無収入期間」の分だけ不利になります。
そこで,不動産の財産分与において,この「不公平」を調整(修復)するために,妻の分与割合を2分の1よりも上げる,ということになりました。
結果的に,妻6,夫4とされました。
この裁判例は,以上のように,大半の財産は分与対象としない,という特殊な前提があります。
一般化できない要素があります。
注意が必要です。

[東京家庭裁判所平成4年(家)第8127号財産分与申立事件平成6年5月31日(抜粋)]
前記認定事実によれば,申立人と相手方は,婚姻前からそれぞれが作家,画家として活動しており,婚姻後もそれぞれが各自の収入,預貯金を管理し,それぞれが必要な時に夫婦の生活費用を支出するという形態をとっていたことが認められ,一方が収入を管理するという形態,あるいは夫婦共通の財布というものがないので,婚姻中から,それぞれの名義の預貯金,著作物の著作権についてはそれぞれの名義人に帰属する旨の合意があったと解するのが相当であり,各個人名義の預貯金,著作権は清算的財産分与の対象とならない。
したがって,本件においては,清算的財産分与の対象財産は本件土地本件建物の45パーセントである。
イ 次に,前記財産(本件土地本件建物の45パーセント)を清算するに当たり,これを形成するに際しての当事者双方の寄与割合を検討する。本件清算的財産分与の清算割合は,本来,夫婦は基本的理念として対等な関係であり,財産分与は婚姻生活中の夫婦の協力によって形成された実質上の共有財産の清算と解するのが相当であるから,原則的に平等であると解すべきである。しかし,前記認定の申立人と相手方の婚姻生活の実態によれば,申立人と相手方は芸術家としてそれぞれの活動に従事するとともに,申立人は家庭内別居の約9年間を除き約18年間専ら家事労働に従事してきたこと,及び,当事者双方の共同生活について費用の負担割合,収入等を総合考慮すると,前記の割合を修正し,申立人の寄与割合を6,相手方のそれを4とするのが相当である。

【夫が一部上場企業の代表取締役というケース】
夫が会社経営者という場合で財産分与が低くなったケースはありますか。

→夫婦共有財産が220億円という非常に高額なケースで,分与割合が5%とされた裁判例があります。

この裁判例(後掲)は,夫の収入が特に高いというケースです。
夫は,一部上場企業の代表取締役でした。
婚姻期間(同居期間)中に得た収入は220億円と,特に多額でした。
妻は専業主婦でした。
この巨額の収入は,夫の手腕・努力によるものであり,妻の関与・貢献度は低いと考えられました。
具体的な,「収入に対しての妻の関与・貢献度」としては,経営者・財界人としての夫を公私にわたる交際を支えた,というものです。
これをどの程度の割合と評価するかが争われました。
結論としては,5%と判断されました。

[東京地方裁判所平成13年(タ)第304号、平成13年(タ)第668号離婚請求事件、離婚請求等反訴事件平成15年9月26日(抜粋)]
(2)そこで,問題は,被告が上記共有財産の形成や上記特有財産の維持に寄与したか,寄与したとして,その程度が問題となる。
ア 前記認定のとおり,被告は,A1社,I1社を初めとする多くの会社の代表者であって,社団法人,財団法人等の多くの理事等を占める,成功した経営者,財界人である原告の,公私に渡る交際を昭和58年頃から平成9年頃までの約15年に亘り妻として支え,また,精神的に原告を支えたことからすると,間接的には,共有財産の形成や特有財産の維持に寄与したことは否定できない。
 なお,この点に関し,原告は,被告が原告の交際を助けた点については,直接利益に繋がるものではなく,経営者,財界人としての社会的責務を果たしたボランティア的なものに過ぎず,原告の財産形成に対しての寄与はまったくなく,むしろ経済的には損失である旨主張する。
 しかし,その社会的責務は,成功者である経営者,財界人としての原告の地位に当然伴うものであること,それを果たさないことは,成功者である経営者,財界人としての原告の地位を脆弱とする危険性も否定できないこと,原告が,被告が社会的責務を果たすことを要請し,具体的な指示もしていることからすると,その社会的責務を共に果たした被告は,間接的には,原告の財産維持,形成に寄与していると解される。
イ しかし,他方,前記認定のとおり共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと,その運用,管理に携わったのも原告であること,被告が,具体的に,共有財産の取得に寄与したり,A1社の経営に直接的,具体的に寄与し,特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると,被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。
ウ そうすると,原被告の婚姻が破綻したのは,主として原告の責任によるものであること,被告の経歴からして,職業に携わることは期待できず,今後の扶養的な要素も加味すべきことを考慮にいれると,財産分与額は,共有物財産の価格合計約220億円の5%である10億円を相当と認める。

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