一本の電話をとった。
「るるぶ」の編集者さんからだった。
「この度は、本当にありがとうございました。素晴らしい取材をさせていただき、感謝しております。お父様にくれぐれもよろしく・・・。」
そして、同時にダイニングテーブルの郵便物に気づいた。
それは、編集社から送られてきた最新号の「るるぶ」。
うちの島の特集があった。
「私がご案内します!」
という見出しとともに、素敵に載っていた写真。
そこには、満面の笑みの父と母と、うちの船。
何十年も周遊船で島をめぐり案内してきた父。
最近はあまりの人気で、JTBやクラブツーリズムなどが一年前から日程を抑えるので
「しんどい。しんどい。」と父もうれしい悲鳴だったのです。
母が病気になってからは、母を乗せて仕事をしています。
毎日壮大な岩場の景色を見るおかげでか、治らないはずの母の病状は奇跡的に回復。
それにしても不景気で旅館をたたみ、認知症の母を抱え・・・他人から見たら「折れた翼」です。
しかし父は、折れた翼のまま空を飛んでいる・・・。
そして、人に感動を与えている。
私は、自分の折れてもいない翼を広げることに恐怖を抱き、あらゆるものに遠慮して、自分を狭めていた。
「羽ばたいてもいいんだよ」
いや「いい加減、羽ばたかなければならない」
るるぶの両親を見て、私はやっと心に誓う事ができました。
すべては凄いタイミングで目の前に現れるのですね。