「家族ががんになれば、正面から受け止め、支え合う。職場だって同じはず。支えられる社員は自分の居場所はここだと思って頑張れるだろうし、みんなで支えようという気持ちが生まれれば、組織は以前より強靭になる」


社員のがん治療と仕事の両立支援策、がんにならないための特別検診の実施、高額先進医療費の全額負担、闘病しながら働き続けたいと考える社員を会社全体でサポートしていく体制を整備しているという、伊藤忠商事専務執行役員の小林文彦さん(60歳)は、20年以上、人事畑で、黒子として経営者の意を全力で支え、「ダメなものはダメ」と言ってきたと言います。


「人は感動がないと動かない」をモットーに、会社全体が朝型勤務シフトに移行するよう、朝8時までに出社した社員に、日替わりのスープやおにぎりなどを無料提供しており、毎朝千人以上の社員が次々と朝食を取りにやってくるのだそうです。



(↑新聞記事の一部を紹介するものですが、以下、追記します。


詳しくは朝日新聞2月3日のbeを読んでください。


その会社の支援のきっかけは、がんで亡くなった社員が「日本で一番いい会社だ」と言ってくれたことで、告別式から3ヶ月で、がんの治療と仕事との両立支援策をまとめたのだそうです。

また、「なぜ、がんだけ?」と問われた時の答えに窮するので支援が進まなかったという見方もあるそうです。その会社では、亡くなった社員との関係性から始まったので、がんの支援からスタートしたそうですが、がんに準じた病気も対象にしているそうです。また、がんにならないために、というのは、がんに限らず、健康経営への決意だとも書かれています。)



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そんな新聞記事を読みながら、ふと、私も遠い昔に人事で働いていたことを思い出しました。


私は大学を卒業して最初に就職した組織で、最初に人事課に配属されました。


少し特殊な組織で、経済産業省を監督官庁とする政府系金融機関で、国の予算や時の政策に左右される体制でしたので、今は当時の名前で組織は残っていません。


主に政府開発援助としての円借款を業務としていて、それに憧れて働く人たちの多い中、人事に配属された先輩や上司の方たちは、いつも人事の業務の重さと職員のための献身と、関係各所との調整で、お疲れのように見えていました。


予算が降りないけれど、職員のために必要な費用をどのように捻出するかなど、小さな会議室でいつも相談していました。


人事異動があり、総務部配属になると、多くの方は修行に入るかのようなお顔をされていましたが、私はペーペーの新人事務職ながら、職員のために組織の意を全力で体現できる人が信頼された人選なのだな、と感じていました。




それをサポートするのが私たち女性事務職員の仕事で、事務職の先輩方は、いつも明るく、静かに、正確で丁寧な仕事を淡々とこなし、私はいつもその姿に憧れていました。


どちらかと言えば、円借款業務の最先端よりも、それを支える人たちを、さらにかげで支える人たちの存在に注目していました。



 

私の担当は、研修と旅費。

職員研修の企画のサポート、通信教育の回答用紙の回収や返却、TOEICの実施、留学生の留学先滞在費の計算と支給、出張者の旅費支給とその清算・・・・など。


他にも、人事では、

駐在員の滞在費、その家族の研修、給与、社会保険・・・・など様々な業務があり、職員の引越、結婚、出産、介護、病気など、職員の暮らしと近いところにありました。

 

初めて「仕事」を経験しましたが、「仕事」とはみな生活するためにしていて、どんな人にも個人の私生活があって、生きることとか人生に直結している。

仕事と私生活とは切っても切れない関係にあって、その両方をサポートするのも組織の役割の一つなのだと教えられていたと思います。

 



ハードスケジュールで、急遽きまった出張の申請にいらしたり、どの国にあるのかわからないような都市へ転々と出張されて帰国されるとその清算に窓口にいらっしゃいます。


「エコノミーには乗りたくないんだけど費用は出ないのかな」「土日に移動すると休めないよ」というようなお話を聞きながら、お土産のお菓子をいただいたりしていました。


それは業務報告書には出てきませんが、確かに職員の声なのだと感じていました。


私はというと、いまでもそうですが、おっちょこちょいで数字が苦手、旅費の稟議書はいつも修正印だらけで、留学生の滞在費は間違えてしまって「返納」や「追納」をお願いしたりの、ダメな職員だったのですが、世界を相手に国レベルで開発援助のプロジェクトにかかわる組織で、10円、1円単位で、出張旅費の精算をしながら、沢山の方たちと接してきました。



 

私がその組織にいたのは20代の4年半です。

仮に就職活動をしようとして履歴書に書いても、キャリアや能力としては評価に値しない経験だったと思います。


それでも、私にとっては、この組織で働いた4年半の時間が、今でも生きていて、宝物になっています。


その組織で見たこと、聞いたこと、知ったこと、人の顔、言葉、声、関わり、失敗したこと、叱られたこと、楽しかったこと、苦しかったこと、優しくしてもらったこと、学んだこと、人とのつながり、そのすべてが、今の私の一部になっていて、今でも当時の先輩後輩、同僚が教えてくれること、助けてくれることがあります。

 



このブログを読んでくださっているあなたはどんな暮らしをしているでしょうか。


私たちは社会にいる限り、思いもよらないところで、誰かがその社会や組織のために、職員のために、あなたのために、そのことを誰にも言えずに、つらい仕事、汚い仕事をしてくれているかもしれないことを時々思い出してください。

 

思いやりとは想像力だと思うのです。

何かをしてくれた人

「君のために〇〇したよ」と報告してくれる人

そうした見えるものに「ありがとう」というのは案外簡単です。

 

今月振り込まれるお給料は、毎月手続きしてくれている人がいます。

その金額をあなたへの評価、感謝として決めてくれた人がいます。

いつも働くビルのトイレを掃除してくれている人がいます。

それは、注目されるに値しない、最新でもなんでもない仕事かもしれませんが、でも間違いなくしてくれている人がいます。

 



茶道は、茶室でおこなわれる一連の作法の印象が強いかもしれませんが、実は、見えない場所でのことが多くを占めています。


茶室をふいて、水屋で道具を清め、灰や炭を整える。

道具の取り合わせを季節ごとに考える。

人の思い通りにはならない気温に応じて芽吹く草花を選ぶ。

 

「ああ、美味しい」「ありがとうございます」と言える客であるためには、見えないところをわかるようでなけれは、本当のお茶を味わえないかもしれません。


または、お茶を点てる亭主は、さまざまな日常の中でなんとかその時間を空けてくださったお客様がいるからこそ、お茶が出せます。



 

世界の人が魅了し注目する日本の心や美しさ、禅的な思想というのは、日本人が意識しないところなのかもしれませんが、この「見えないところ」にあるのだと感じています。


論理的思考やすぐに役立つ情報、科学的な根拠、効果の見える化だけでなく、「見えないところ」を忘れないでいたいと、いつも言い聞かせています。



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