漆・赤と黒 | 水上繭子*表千家茶道・大人になったら始めたい いのち目覚める暮らし教室・植物療法ジェモセラピスト
結婚してすぐの頃、お正月の支度をしたいと思って、塗のお重をみてまわった。

お屠蘇や雑煮椀のセットになると、桁が違って、20代の私には決断できなかった。

それで、お重だけ買うならと、実家で見慣れた黒い漆器ではない、赤いお重が新鮮に見えて購入した。

2年くらい使ったと思う。


でも、やっぱり、お正月には、家族で気持ちを引き締めてお屠蘇の酒器を回したいし・・・と思うようになったが、赤いお重に合わせる酒器がなかなか見つからなかった。


当時それなりに大枚をはたいたつもりの朱のお重を買ってしまったことを後悔していた。

気にいった松が描かれた黒のお重と酒器のセットを買って、それいらいお正月には黒を使ってきた。


使わないお重は限られた収納場所に15年くらい無駄に鎮座していた。



 

先日、料理教室で、朱のお重を出してみた。


いつか、こうして使うことがわかっていて、あの時の私は買ったのかもしれないと思った。

黒にはない、神聖さと美しさを感じる。


なぜか華やかさは黒の方があって、朱には落ち着きと温かみがあるように感じる。

 

 

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以前、奄美大島の伝統発酵飲料ミキを教えてくださった田町まさよさんが話してくれた。


「赤漆は、女性の色、子宮の色、口噛み酒を注ぐ酒器です。」

古代では、未婚の女性が米で口噛み酒を作って発酵させた。

それは、子宮を持つ女性の体内菌が生命力を持っていると知っていたからだ。

その命の発酵酒を、神にささげた。

そのお下がりを、村の人々がいただき、健康を維持してきた。

神への捧げものと村の健康を、女性が担ってきた。

 

それを男性もしたいと考えられて登場したのが黒で、政治的なフォーマルな場面で深く黒い漆器を用いるようになる。

体内菌の代わりに麹菌を見つけだし、女人禁制の酒蔵ができていくというのだ。

 

 

漆は英語で「Japan」と表記されることがある。

漆は数千年の昔から人の手によって植えられた。

塗料として、接着剤として、自然の恵みだった。

漆の木から採取された樹液に含まれる特有の成分には強い耐久性があり、その塗肌は優美でなめらか。

触るとひどくかぶれ、その樹液が保護したり接着したりすることから、漆には邪悪なものを寄せ付けない力があると考え、特別な力があると信じられていた。

 

漆器は出来上がった直後と数年後では、色合いが変わる。使い込むうちに光沢が増し、より鮮やかで美しい色味を帯びてくる。

月日と共に美しくなる。

人間みたいだ。

 


漆の歴史を紐解けば、縄文時代にまでさかのぼる。

あの、教科書にイメージ画で描かれる原始人のような暮らしの中で、今とほとんど変わらない技術で漆器が作られていたなんてただただ驚く。


そしてその時代の漆器のほとんどが赤なのだ。

縄文時代に、赤を生み出す顔料の中で最も上質とされてきたのが「朱」。

 

朱は辰砂(しんしゃ)という鉱石を砕いて作られる。

撹拌して、熱を加えた漆にこの朱を混ぜることで、光沢のある赤ができる。

こうして生まれた美しい朱の漆は、神社仏閣にもちいられ、朱を用いた器は、儀式の場、祭祀、位の高い人にしか使うことが許されなかったのだ。

 

漆器が庶民の間に普及した中世以降も、赤は高貴な色として珍重され、仏事や神事に使われてきた。

 



一方、黒い漆が誕生するのは、弥生時代。

より深い黒を求めてきた。

 

中尾英力さんの懐石クラスでも、赤い懐石道具はより格が高い、神聖な場で使われるのだと教えていただいた。


 

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NHKの美の壺のページでこんなフレーズを見つけた。



漆の赤と黒。

黒は果てることのない宇宙の色、夜の空の色。

赤は、太陽の赤、血の赤、すなわち命の赤。

 


なんて美しい組み合わせなのだろう。

 

そういえば、クルマを愛する男性に、赤いポルシェとか赤いカウンタックに憧れる人が多いらしい。

男性の車好きはそのフォルムに女性や恋人のようなものを感じると聞いたことがある。


男性は赤く丸みを帯びた女性に憧れている、きっと、それは永遠の母性だ。

 


赤と黒。

女性と男性。

女性性と男性性。

両方あって美しい。


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得意の赤を着ているお気に入りの一枚(笑)




内側に闇夜を美しく照らすような黒い漆が塗られ、外側を太陽のようなあたたかな母性で朱に塗っている、このお重が今はとてもいとおしい。


何千年も前に技術が確立し、その伝統と人々の思いが綿々と受け継がれて使われ続けてきた。

命が育まれる時にいつも漆があったのだ。

今年は、これにおせちを詰めてみようと思う。

 




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