かわいいは永遠

先日、義母が入居している施設から電話がかかってきました。

「こんにちは。○○ホームです」
「加藤様ですが、今日、食堂にいらっしゃったときにティッシュをお口に入れていらっしゃいました。すぐに出していただきました。童謡の本をお渡ししたら、今はそれに集中していらっしゃいます。ティッシュは目に入らないように隠しました」
「アルバムなど、ご本人が興味を待てそうなものをお持ちいただけないでしょうか」

義母は90歳。認知症。ひとり暮らしが難しくなり、有料老人ホームに入居して丸2年になります。認知症の程度は、入居当初は初期~中期だったのが、今は中期~それ以上へ差しかかっているように(素人の私から見ると)感じています。これといった持病はなく、立位や座位、歩行は充分可能ですが、本人の意欲が低下して歩こうとしなくなりました。手を引いて歩かせるか、車椅子です。食事は普通食で咀嚼も問題ないですが、食べることの意味がだんだん分からなくなっているようです。トイレはリハビリパンツ使用。誘導すれば自力排泄可能です。

要するに認知症が進行した分、激しい介護拒否や困った言動は減ってきた感じです。日中はうつらうつらしています。そんな中、義母の症状はまた一段階進んだのかもしれません。異食行動から気をそらすために有効な何かが必要です。とはいえ、今の義母に見合うものって何だろう??としばし考え込んでしまいました。

義母は、亡くなった義父も住み慣れた自宅もすっかり忘れました。夫や私は分からないときが多いです。テレビは内容が理解できなくなりました。意識の集中が数秒しか持続せず、話しかけても独り言をつぶやくだけで会話が成り立ちません。考えた末、夫の幼少期のアルバムなどを持って行くことにしました。

午後、施設へ行くと、義母はおやつを食べた後のようでした。食堂で眠り込んでいました。

「お義母さん、こんにちは」
「お義母さん、こんにちは。まやです」


義母が目を覚ましました。私が誰だか分かっていないようでした。義母を動揺させないように、腰をかがめて義母を見つめ、背中を優しくさすりながらゆっくり話しかけます。義母の隣に座り、アルバムを取り出しました。

「今日はね、アルバムや本を持ってきたよ」
「ほら、○○幼稚園のアルバム」「◎◎(夫)さんの幼稚園」


アルバムの古い写真を指さして義母に見せます。写真の義母や夫を指さすと「ここにいた」「これ、私だ」とつぶやき始めました。遠足の写真、習い事の発表会、クリスマス会、運動会……どの写真もじーっと見ています。私より先に「ここにいた」と夫を指さすこともありました。

アルバムを興味深そうに見ていたので、買ってきた本を試しに見せてみました。全国各地の花の名所のガイドブック。四季折々の花の風景が大写しになっている本です。色鮮やかな写真を見せると「わぁ!」とうれしそうに反応しました。「北海道……ユリ」と見出しを音読し始めました。難しい漢字でも正しく読めるものの、内容を理解しているかどうかは分かりません。数秒しか記憶が持たないので、数秒前に見たページを再び見せても、毎回「わぁ!」「フジ」「わぁ!」「ヒマワリ」と音読します。

もう少ししっかりしている頃にガイドブックを見せたとしても、義母はここまで素直に反応しなかっただろうと思いました。「私は年寄りだから、もうどこにも行けない」「こんなの見ても仕方がない」「生きていても何の楽しみもない」と愚痴るだろうと思います。美しいものを見て「わぁ!」と一瞬一瞬感動し続ける……そんな義母の様子を見守りながら、認知症って実に興味深い病気だなぁと感じました。

3冊目、「きいちのぬりえ 着物編」を見せてみました。「きいちのぬりえ」は昭和20年~30年に一世を風靡したぬりえです。今、復刻版が販売されています。私が見ても、レトロでかわいい少女画です。自分用に欲しくなるくらいです。よそ行きを着てお出かけしたり、藤娘の衣装で踊ったり、三味線の稽古をしたり……そんな少女たちが可愛らしくてたまりません。

この本、義母が一番喜んだ本なのかもしれません。「かわいいねー」「藤娘だねぇ」「(三味線の)おけいこしなくっちゃね」と、出てくる言葉が複雑になってきました。そういえば、義母は三味線や琴、踊りの習い事をしていたそうです。

気がつくと、ふたりで「きいちのぬりえ」を一時間以上見ていました。義母が疲れたんじゃないかと内心心配しましたが、「今日は踊りのお稽古」「お姉さんの着物を着せてもらいました」とずーっと音読していました。

私が帰ろうとしても、義母はまだ見たそうでした。施設の方に話した上、義母にきいちの本を渡したままで帰りました。「じゃあ、私行くね」「また来るね」と言うと、義母は「また来てね」としっかり返事をしてくれました。食堂を出るときに「ばいばーい」と手を振ると、義母も手を振ってくれました。ここ最近なかった反応でした。義母は、私を「きいちの本を持ってきてくれたお友達」と思っていたのかもしれません。

 



今の義母は「年老いた90歳の童女」なんだと思いました。きいちのぬりえに登場する少女と同じなんだと思います。義母とは良好な嫁姑関係は築けませんでしたが、童女に戻った義母とこんな風に過ごせたことに私自身、心を動かされました。結婚以来、私にとっての義母は私の中にある怒りや憎しみ、怖れなどを指し示す存在であり、義母にとっての私もおそらくそうだったと思います。内なる闇を照らし合うような関係性がこのような形で赦され、癒されていくとは思いもよりませんでした。

その瞬間しか記憶が続かない義母は、あの日のことはもう忘れていると思います。今の状態がいつまで持つか分からないので、次回私が会いに行ったときに義母と同じように過ごせるかどうかも分かりません。しかしあの日の午後、義母と「わぁ!」「かわいいねー」と分かち合えた記憶は、義母のどこかに残っていると思いますし、私も忘れません。
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私が持参した、花のガイドブックはこちらです。

 

 

最近、「絶景」がブームですよね。これも、一度は見たい「花満開の絶景」がたくさん載っています。風景写真が見開きで載っている分、ガイドブック的な情報は少なめですが、これは見て楽しむ本なんだと思います。認知症(認知能力がおぼつかなくなり、視野も狭くなってモノが見えづらい)方の感性や情緒に直接響きやすいと思います。

きいちのぬりえは、何種類も復刻されています。私は、着物の女の子ばかりのぬりえにしました。

 

 

ぬりえもお年寄りには見やすいと思います。しっかりしている方なら、一緒にぬりえをしても楽しいと思います。義母は見るだけでも充分にうれしそうでした。次はおよめさん編を持っていこうと思います。私が見たいので♪♪

義母の介護の大半を施設にお任せしている私ですので、介護について何も話はできないと思いますが、私の場合、義母の話相手や義母の気持ちを穏やかな方向へと誘導することに最も苦労してきました。義母のでたらめな話を共感的に聞き続けると、HP(ライフポイント)をザックリ削られる感じでとても消耗します。認知症の人ってある意味とても敏感なので、こちらの感情や内面は確実に見透かします。適当に聞き流すことはできず、かといって、いちいち真に受けていたら、こちらの感情や思考が振り回されてしまいます。

今回、お互いに興味があるアルバムや本を一緒に見ることで、言葉は交わさなくても気持ちで義母と交流できた気がしました。かわいいって永遠だと思いました。義母に小一時間つき合っても全然疲れませんでした。これも、義母を日々介護して下さっている方々がいるからこそ可能な対応なのかもしれませんが、お年寄りへの接し方に苦慮している方に少しでも参考になればと思っています。

 

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