慌てて
席をあける青年。
おじーさんは
がみがみと怒りつづけた。
青年はたえた
うなづくこともなく
目を合わすこともなく
ただただ
おじーさんの前に立ち尽くしていた。
まわりの空気は凍りついたまま
だれもが思った
どうか早くおじーさんよ降りてくれ
もしくは
青年よ、逃げてくれと。
でも青年は何駅も何駅も
動こうとしなかった。
ある駅で
おじーさんの隣の席があいた。
すると、
青年はとまどうことなく座った。
おじーさんは変わらず
がみがみと怒りつづけていた
もはや、
青年に、というよりも
最近の若者に向けて…
青年は
おじーさんを見て
にこりと笑った。
たった一言。
「すみませんでした。」
と
おじーさんも笑った。
そして
次の駅でおじーさんは降りた。
青年にむけ一言
「グッドラック」
おじーさんは
とても優しい顔をしていた
まわりは一気に安堵に包まれる
笑顔で立ち去った
おじーさんの後ろ姿は
なんだかとてもイキに見えた。
ただひとつ
パンツのおしりの
濡れ染みを除いては…