乱読・誤読・ななめ読み

乱読・誤読・ななめ読み

読んだ本の感想です。

 
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三島屋シリーズ第6弾。
今作から聞き手を変えての
変わり百物語、五話分です。


タイトルにもなっている5話めが
一番ボリュームが大きく、
かつ「御殿」という箱モノにまつわる怪異なので、
これは第一作「おそろし」のオマージュも兼ねてるのかなぁ、
とあらぬ邪推をしてしまいました。


思い返してみれば、これまでに
蔵や屋敷といった、「イエ」に起こる不思議な話が
ことあるごとに、出てきた気がします。


もしかしてこれが、このシリーズのコア?
というのは、うがちすぎでしょうか。


聞き手が交代しての新味は、
(ははぁ、確かに未婚のうら若い女性には
聞かせたくない話だよなぁ)
という語りが続けざまに登場したあたりですかね。


ただ、聞き手にまだ、深みがないように感じます。
これから何か起こって、聞き手にふさわしく
なってゆくのかなぁ、と読んでます。


 

新宿鮫シリーズ第11弾。
上司と恋人を失った主人公の踏み出す第一歩。
8年ぶりの新作です。


そうそう、わたしは前作を読みとおしたのが
この作品が連載されるのがきっかけだったのでした。
そのくらい、主人公の鮫島が失ったものが
あまりに大きすぎて、結末がこわかった。


喪失の影響は、あちらこちらに残っていて
まだ完全には立ち直っていないのが窺える
痛々しい描写がちらほら。


それでも、仕事に対する信念と情熱は
変わらないのです。
かえって凄みが増したというか
リミッターが外れたような印象も受けました。


新しいキャラも登場したり、
今までの脇役がグッと存在感を増したり、
前向きな変化もあって、今後が楽しみ。


一抹の寂寥感は、残っているけれど。
一歩を踏み出したんだなぁと感じました。

道後温泉のお遍路宿を舞台にした
1人の少女の再生ストーリー。


なんだか久しぶりに、小説を味わった気がします。
そうだ、本を読むというのは本来楽しいことだよな。
仕事に役立つ本ばかり手に取っていたので
すっかり忘れていました。


天童さんは現実の悲劇を容赦なく描くので
読後感が非常に重たい印象があるのですが、
今回は、ほんわかムードのゆったり進行。
温泉のようにあたたかい気分で読めました。


物語のクライマックスが、地域のお祭りなのですが
コロナウィルスの影響下にある昨今だと
一気にそらぞらしくなってしまったのが、哀しい。
これは読み手の問題ですが。


こういう生き方もあるんだなぁ、
わたしにもできるだろうか。
人にやさしく生きていきたい、
それが自分にもラクな生き方だよなぁ。

 

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ジビエ料理にまつわる
ハンターとフレンチシェフの人間模様。


最近、狩猟って、ブームなのか?
マンガでも見かけます。
狩猟女子とかいうコトバもあるよなぁ。


食材を「獲る」ということについて
問題を提起しているという点では
新しい切り口かも。


ジビエ料理なんて食したことがないので、
美味しいのかどうかはわからないけれど
すごく手間がかかっている描写です。


スーパーで発砲スチロールにのった
肉のカタマリしか買わないでいると、
(もとは生きている動物の一部だったんだよな)
という想像力を失ってゆきますよね。


そういうのって、問題なんじゃ?
ということを気づかせてくれた一冊でした。

 

 

 

 

ダイエー創業者中内功の栄枯盛衰と
戦後日本を重ね合わせたノンフィクション。


佐野さんのノンフィクションで
長くてなかなか手を出せなかった
上下巻(しかも分厚い)。


イッキ読みはさすがに無理で、
毎日1章ずつ、コツコツ読んでました。


あぁ~、ダイエーという企業はまさに、
高度経済成長、消費社会とともに
あったのだなぁ・・・
とつくづく感じましたが。


実はダイエーは、まだ会社としては
あるんですよね。
イオンスタイルとかグルメシティとか
店名を変えてはいるけれど。


そして読み進めている最中、
新聞にダイエーが24四半期ぶりに
損益が黒字転換したという記事がのりました。


かつての勢いも栄華も失って、
業態も食品スーパーになり、
イオンのもとで細々とやってて、
それでようやっと上向きになったと。


ガレキだらけの廃墟の中から
新芽が顔を出したようなイメージ?
長いトンネルを抜けたといってもいいのかな。


そういうタイミングで読んで、
良かったのかもしれません。