【第54話】森忠政の隠し湯~岡山県の奥津温泉郷
忠政公祝賀行列に疲れ、足腰の痛むその翌日。
昨晩に晩餐を共にした皆様方が早朝に本源寺に来訪された。皆様ホントにタフである。私より年上の方ばかりというのに、お元気である。疲れを知らないのだろうか・・・?むしろ昨日の余韻に浸っているのだ。そんな中で私だけ腰を抑えてしかめっ面では、なんとも恥ずかしいので、ここは痩せ我慢で愛想を振りまき、本堂の特別展をガイドする。
さて、前置きはここまでとして、
そのお客様方は夕方近くにお帰りになり、そのまま別室でバッタリ伸びていると、和尚さんの誠に格別なるご配慮のもと、奥津温泉へご案内いただいた。
この奥津温泉、かねてより行きたいと思っていた秘湯であり、かの森忠政公お気に入りの温泉として知られていた。4年前、この地を訪れようと鳥取県側からチャレンジするも、交通の便が悪くて断念していたのだ。泣くほど嬉しい好チャンス到来である。
今回和尚夫妻がご案内してくださったのは、奥津温泉の中でも核心地とも言える、忠政公の「鍵湯」。
文字通り、忠政公が御自分専用の湯船とするために鍵を掛けて番人を置いたという湯船そのものである。
現在は「奥津荘」という旅館の所有となっており、既に室内風呂となっているも、忠政公が腰掛けた石がそのまま湯に沈んでいるのである。
和尚と二人して使っていると、並べられた巨石の間から、ポコポコっと気体と共に湯が湧き出してくるのだ。400年前のそれと変わらぬ素晴らしい温泉で、ヌルッとしたお湯がたまらなく良い。
400年(旅館の方に寄ればそれ以前という)以上、絶え間なく沸き続けている「鍵湯」の湯船・・・ということはである。テレビで見る江戸時代のヌカミソではないが、忠政公が浸かられたお湯の名残がそのまま現代に継続していることになる。温泉王国ニッポンといえど、このような温泉は数少ないはずである。
旅館の女将さんにも良く接していただき(恐らく菩提所の和尚を同伴していたからだ)、特別に撮影の許可まで頂いたのでこちらにご紹介する。
鍵湯の鍵も平成の世ではこんなかんじ。
かくして、体力が充電され完全復旧した私はこの夜のバスで新宿への帰途についた。
もしこの温泉に浸からず、バスに乗っていたら・・・・。おそらく海老名サービスエリア(5月8日の項参照)で救急車を・・・ということになっていたかもしれない(笑)
ちなみに、奥津荘は現在改装中で、日帰り温泉のみ営業である。詳細はホームページ
をご参照されたい。
とてもありがたいことであった。