今度の上京は、もともと会社の仕事だったのです。「歴史総合」全6巻中の5巻までが完成間近なので。今月末にはすべて揃う予定なので、乞うご期待です。本日は、会社のメルマガでの紹介文です。

 

 

 「歴史総合」って、聞いたことがありますか? 昨年から高校の教科に採用されました。

 

 多くの人にとって、学校で学ぶ歴史というのは、日本史と世界史に分けられていたと思います。しかし、歴史総合は、その名称を見ただけでも分かるように、その2つを「総合」した科目なのです。

 

 「ただでさえ歴史って覚えることが多いのに、総合なんかしたら嫌いになる生徒が増えるよ」と心配する人も出てくるでしょう。確かに、従来の歴史のことを前提にすると、そんな心配にも根拠がありそうです。

 

 しかし違うのです。歴史総合の最大の特徴は、「覚える歴史から考える歴史へ」の転換なのです。

 

 歴史って、いつから「暗記物」に括られることになったのでしょう。私が大学を受験した際(1973年)、社会科では日本史と世界史を選択しましたが、答えはすべて「130字以内で答えよ」というものでした。マークシートなどなかったのです。だから、受験勉強と称して、歴史をテーマにした岩波新書を読みあさったものです。中央公論社の「日本の歴史」「世界の歴史」全20巻程度のものにも挑戦しました(読み切れませんでしたが)。楽しい受験勉強でした。

 

 ところが、いつの間にか、歴史は「暗記物」になり、受験生に苦痛を与える教科になってしまいます。それではいけないと、10年ほど前、いまではバッシングに遭うことの多い学術会議が改革を提言し、文科省も重い腰を上げて誕生したのが、「歴史総合」なのです。

 

 「覚える歴史」の枠内で考えていたら、誰もそんな教科を教えられる先生はいません。文科省だって「学習指導要領」を提示することもできないほどの重量級です。だから、歴史総合の学習指導要領は存在しますが、これに限ってはあくまで例示的に要領を示すものであって、その通りに教えないで済むという位置づけです。そんな学習指導要領、ほかには存在しないのです。先生方が自由に教えられる。

 

 こんな魅力的な教科が始まるというのですから、出版社が関心を持たないはずがありません。私もこの話を聞いたときから、高校の教科書や参考文献は専門の出版社に任せるしかないけれど、歴史総合の見地に立った一般書をつくりたいと思いました。日本史と世界史に区別された歴史しか知らない読者に、新しい見地での歴史書をお届けするのです。

 

 そこで、知り合いの歴史学者と相談し、7年前に「歴史総合研究会」を設立。西洋史、東洋史、日本史を専門とする6人です。毎年3回、春、夏、冬と研究会を積み重ね、すでに20回を数えるまでに至りました。専門の異なる学者が、横断的に7年間も議論して本をつくるって、少なくとも歴史学の分野ではかつてなかったことだと思います。

 

 先生方も楽しかったのだと思います。だって、例えば「国家」とは何かということが、邪馬台国、ビザンツ帝国、秦や漢、ベトナムの王朝などを事例にして、それぞれの専門家が議論しあうのですから。私の全回に参加して、知的刺激に満ちた時間を過ごすことができました。

 

 こうした議論の末に誕生したのが、シリーズ「わたしたちの歴史総合」全6巻です。世界観、歴史観、を探求するシリーズになっています。先ほどの「国家」もそうですが、「国民」とか「地域」とか「支配」とか、わたしたちがこの日本で生きていく上で直面するいろんなことを、どう考えればいいのかの素材を提供してくれます。

 

 歴史の本はたくさん読んだという方にも、まったく新しい角度からの本になります。これから本格的に歴史を学ぼうと思っている方にとっては、今後の歴史学の本流となる考え方を、最初から身につけることができます。是非、手元に6巻セットをお揃え下さい。