昨夜は、年に一度の『若マル』暑気払い。何かというと、『若者よ、マルクスを読もう』の著者である内田樹さん、石川康宏さんをお迎えし、天ぷらを食しながら楽しい一夜を過ごす会なんです。

 

 感慨深いです。このシリーズは、マルクスの著作をめぐってお二人が書簡を交わすという趣向で、最終巻の刊行が目前に迫っていますが、『共産党宣言』などを論じた最初の巻が出たのは2010年。もう12年も前なんですね。

 

 内田さんがどこかの巻のまえがきで書いておられましたが、冷戦が終わって社会主義の権威が地に落ち、マルクスも廃れるかもしれないという時代に、マルクスを読めという本のシリーズがここまで続くとは思わなかったそうです。そしてようやく、目標としてきた『資本論』まで到達するのです。

 

 いまでは、内田さんも石川さんもマルクスを論じる人として地位を確立していますが、このシリーズが出るまでは、そういうことではありませんでした。お二人ともマルクスを論じた本を書かれていなかった。

 

 14年前、石川さんと飲んでいたとき、じつは同じ大学にいる内田樹さんとは親しい関係だと伺ったんですね。ちょうどその頃、内田さんの『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)を読んでいた私は、この内田さんというのは、マルクスがどうだとか書いたものはないけれど、きっとマルクスに造詣の深い人だと思っていたのです。

 

 だから、石川さんの話を聞いたとき、じゃあ、マルクスをめぐって、内田さんと石川さんの対談をしましょうと持ちかけました。石川さんも、マルクスに関する本を出していなかったけれども、コミュニストの研究者として歩むなら、そこに踏み込まなければと思ったのでしょう。すぐに内田さんにメールを出してくれた。そうしたら、十数分でOKの返事が来て、内田さんを訪ねるということで、トントン拍子にすすんでいったのでした。対談だと直すのがやっかいだから、往復書簡にしようということになって。

 

 ということで、この本、編集者であるわたしにとっても、感慨深いです。編集者の働きかけが、研究者の歩みに少しは影響をするのだと実証できた点でです。

 

 最終巻が出るためには、内田さんがあと少し書簡を書く必要があるのですが、内田さんがおっしゃるのは、これで終わりかと思うと、マルクスロスの感情が襲ってきて、残りがすすまないのだとか。こら!

 

 ということで、もう少し、楽しみを続けます。