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(産経新聞より)

 30日午後8時半ごろ、鹿児島県屋久島の西約650キロの公海上で、海上自衛隊の護衛艦「しまかぜ」が中国籍の漁船と衝突した。海自などによると、漁船には乗員13人がいたが、死者や行方不明者はいない。護衛艦、漁船とも現場海域に停泊しており、海上保安庁や防衛省が詳しい経緯を調べている。

 防衛省によると、しまかぜは29日午前に佐世保基地(長崎県)を出港し、警戒監視の任務中だった。衝突により、左舷側の水面上約5メートルの部分を損傷した。

 防衛省は「海保の捜査に協力する」とする一方、海自護衛艦隊司令部に事故調査委員会を設置し独自に原因究明も進める。漁船が挑発的な行動をしたという情報はない。

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 防衛省、海自側の対応も、新聞報道も、冷静で良かった。ただ、この周辺海域では同じようなことがこれからも起こりかねないし、両国関係が熱くなっている場合に起これば、どう発展していくか予測できない。だからこそ、交戦法規違反をどう裁くのか、ちゃんと整備しておかねばと感じる。

 

 例えば、もう10年前のことになるが、尖閣周辺にやってきた中国漁船と海保の巡視艇が衝突し、船長を日本側が拘束して緊張が高まったことがあった。そんな緊迫した事態において、今回のように公海で、海自と中国漁船が衝突し、もし漁船側に多数の犠牲者が出たとしたら、ゾッとする。

 

 中国側は、おそらく、自衛隊による民間人虐殺と国際社会に訴えようとするだろう。そして、尖閣をめぐる争いに有利に利用しようとする。

 

 ところが、今回の事故原因が海自側の過失だったとして、日本側にはそれを裁く法体系がない。海外での過失は裁かれないことになっているからだ。

 

 そうなると中国側は、そもそも日本には裁く意思すらないとして、さらに批判を強めてくるに違いない。大変な事態になっていく。

 

 だから、こういう場合、ちゃんと原因究明をしていくというだけでなく、自衛隊側に責任があったら裁くための法体系は存在していて、法治国家としてちゃんと裁いていくということを、堂々と言えなければならないのである。そうしないと、国際社会を味方につけることができない。

 

 「国際刑事法典の制定を国会に求める会」の活動にご注目ください。とりあえず4月3日です。