本日、興味深いニュースがネットで配信されました。


http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a5%d0%a5%bf%a1%bc&k=200908/2009081900478


 配信もとの時事通信社によると、昨年春には品薄状態であったバターは、国内経済の低迷に伴う乳製品の消費減などが理由で、現在の在庫量は適正水準の2倍にあたる5か月分に達しているとのことです。


 昨年のバター不足の騒ぎが嘘のようです。あの時は本当に不思議でした。我が家は比較的料理などにバターを使うほうなので、普段から店に並ぶバターを見続けてきましたが、売れ切れになるなんてことはほとんどなく、棚を占める場所・面積をみても、どちらかというとバターは


「一般家庭ではあまり大量に使わない食材」


の部類であったはずです。それがいきなり売り切れとは、


「品薄になるとのニュースで焦った多くの人が急にバターが食べたくなったのでしょうか。」


 我が家もバターを使うといっても、たまにパンに塗ったり、炒め物に落としたりするだけで一度買えばしばらく冷蔵庫にあります。ですので品薄時にたまたま買えたバター1箱で、そのまま店頭に普通に並ぶ時まで使ってました。


 そして今やバター余って問題化してます。1年もたたずに。当然だと思いました。もともとそんなに消費している食材ではなかったからです。バターを供給する乳製品メーカーも苦労が絶えないでしょう。大して売れなかったのが、いきなり品薄になって、増産を進められた挙句、舌の根も乾かぬうちに余って過剰在庫だというのですから。


 国内での最も大きなバター消費者は製パン業者や菓子メーカーなのでしょう。そういった業界が


「原料用バターを割安な外国産などに切り替えてコストを低減」


してきたというのも実に納得のいく流れです。外国産バターの輸入量もさぞかし増えたことでしょう。余った国産バターはどうなるのでしょうか。何かに再利用されるか、廃棄されるのでしょうか。ともかく今後国産バターの生産量が大幅に減ることは火を見るより明らかです。



 この1年ちょっとに起きたバターの流れ、なにか以前にも似たようなことがあったような・・?とデジャヴュ(既視感)のように感じませんか?そう・・・


 「国産野菜」


が同じような形で追いやられました。野菜を大量に扱うスーパーや惣菜を作る食品会社、外食産業が


「供給も価格も安定しない国産野菜よりも安定して安い外国産野菜」


に切り替えたことで、国産野菜は常に過剰供給状態であり、安定した安値があたりまえになります。そのうえ国産野菜が豊作になった場合はさらに価格が暴落して、農家をして


「こんなんじゃ市場へ出しても箱代にもならない」


と言わせて、畑の作物をトラクターで潰します。そんな映像をテレビで見た私たちは白々しく


「何てもったいないことをするんだ」


と憤りますが・・・・


「常に安定してないと困る」


と生産者や、売り手にわがままを押し付けているのは、私たち一般消費者です。今回のバターの件がいい例です。


「不安定になると聞いただけで、必要以上に買い漁ってしまうのですから」


そしてその要望に皆があわせていくうちに国内の農は衰えていきます。

 

 食を含め世の全ての事象は「流動的です」。まず私たちは「不安定さ」を受け入れることが必要ではないでしょうか。食に関して言えば、


 「(食が)不安定だからこそ、その時ある食に敬意を払える」


のではないでしょうか。私たちが国内の野菜・酪農に対して理解をしていたらこのような事態にはならなかったと思います。私たちが、その「敬意」を持たない限り、食料自給率の向上など夢物語に過ぎません。