他の野菜と比べ、もやしの最大の弱点は何だと思いますか?
私はズバリ、『日持ち』であると断言します。もやしは芽が萌えた状態のものを食べる野菜です。野菜の中でももっとも若採りの野菜と言ってもいいでしょう。その成長力があるから、環境が変われば劣化も早くなる、というのが私の見解です。
ただ私自身は無理に「もやしを長持ちさせよう」などとは、これっぽちも考えておらず、日持ちがしない野菜ということを、消費者に納得してもらおうとこれまで活動をしてきました。
日持ちがしない(走りが早い)のがもやしの身の丈
であると信じていたからです。
理想では新鮮なもやしを買って、その日のうちに食べきるのが良いのですが、とはいえ、昔と比べて核家族が当たり前になり、以前ほど大量に野菜を食べなくなってきている昨今、1袋200~250のもやしすらも、その日のうちに食べきれるのも難しくなってきていることと思います。実際今まで何度も、
「食べ残したもやしは冷蔵庫でどのように保管したらいいのか」
というお客様からのご質問も受けてきました。
私ももやし屋として、もやしの多様性を伝え、提供する義務があります。ですから、ただ
「日持ちしないのだから早く食べてください」
と言い続けるのも、もやし屋として単なる努力不足ではないかと思うようになりました。しかし、だからといって味を殺すような処理をしてまで日持ちさせるわけにはいきません。・・・・・・どうすれば・・・・・
その答えは、ひょんなところから現れました。場所は私がよく訪ねる地元のワイン・バーです。ある日、私がもやし屋だと知っている店長がサービスの気持ちもあったのでしょう、
「どうぞ。食べてください」
ともってきた皿に、
『もやしのピクルス』
が盛られていたのです。いわゆるもやしの酢漬けです。酢漬け・・・今まで考えもしませんでした。答えは昔からの野菜(食品)を保存させる方法、そのうちの一つ、「もやしを漬物にすること」だったのです。いや昔からももやしの漬物はありました。最近は見ませんがハムのような丸いビニールパック包まれた、「大豆もやしのキムチ」です。しかしあまりにも見た目がいまいちで、どこの店にも定番で置いていないところを見ると、自分にとっては印象の良くない食品に思ってました。
しかし、この店のもやしのピクルス、その味わいは、他の野菜のピクルス(ニンジン、大根、セロリ)などと比べても、全く遜色のないものでした。
私という作り手は、これまで
「作ることばかり考えていて、作ったもののその先を見られない、その先の挑戦が出来ない、非情に視野の狭い作り手」
だったのだと痛烈に感じました。作り手としての自分が感じていた限界を、食を愛する人はいとも簡単に越えてくれたのです。
その後、「もやしのピクルス」は、その店で食した野菜ソムリエさんにより、さらなる飛躍をみせることになります・・・・。
次回は、もやしの弱点を克服し、なおかつ優れた食品としても光り輝く
『ブラックマッペもやしのピクルス』
の誕生までを紹介します。