春めいた陽気の日が少しずつ増えてきましたね。
当ブログのタイトルは「院長ブログ」ですが、今回は当院心理士の小野より、カウンセリングについて皆さんに紹介させていただきたいと思います。
それでは、どうぞ。
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皆さんはカウンセリングと聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。
話をするだけで本当に変わるんだろうかと思われる方もいらっしゃるでしょう。話を聞いてもらって癒されたいとか、逆にカウンセラーが何かいいアドバイスをくれて霧が晴れたように解決することができるのではと期待される方もおられるかもしれません。
はじめにごめんなさい。カウンセラーは魔法使いのように状況を変貌させる、素晴らしい助言を与える人ではありません。「何も言ってくれなかった」と失望し来談されなくなるケースもよく耳にします。カウンセラーは「大変ですね」と話を聞いているだけでしょうか。ただ人に話を聞いてもらって何が変わるというのでしょう。
では‘話す’ということにはどういう意味があるのかを考えてみましょう。
まず、話を聞いてもらって気持ちを受け止めてもらうことで心が落ち着く、というのは大きな作用です。誰にもわかってもらえなかったしんどい気持ちや言えなかった傷ついた心をうわべだけの慰めではなくしっかりと理解してもらえるということは本当に大きな力になります。問題に立ち向かう力につながるかもしれませんし、自分の置かれている状況をただちに変えることはできないとしても、ともかく凌いでいくためのエネルギーを取り戻していく支えとなるでしょう。
アドバイスがなくとも‘誰かに向かって話す’ということはそれだけで‘一人で考える’のとは同じではありません。人間はどうしても主観や思い込みを持つ生き物です。ましてやエネルギーの落ちている状態では堂々巡りで出口が見えなくなってしまいます。丁寧に話を聞いてもらうことで頭の中でどうしようもないと思っていた事態が整理され、解決の糸口が見えてくることもありますし、状況自体が自分の思っていたのとまるで違う景色に見えてくることさえ起きる場合があります。
さらに‘話す’ことの効用は‘自分の言葉を自分で聞く’ことにあると思います。カウンセリングの中で相談者の方が考え考えしながら話されるうちに「ああ、そうか」と納得されることがあります。カウンセラーの問いかけにふと答えた言葉にご自分で驚かれることもあります。ご自分で口にしている自分の言葉を耳で聞き、ああ、自分はそんな風に考えていたんだなと改めて(初めて)気づかれるのです。これは実はとても大きなことで、そこから深い洞察が始まることも稀ではありません。
ここまで言っておいて矛盾するようですが、‘話す’=‘言語化する’ということではありません。カウンセラーは言葉だけを聞いているのではありません。表情や間、醸し出される空気などから相談者の本当に伝えたいことを読み取っています。それも‘会って話をする’からこそわかることです。
このようにカウンセリングは‘話す’ことを通してご自身や周りのことを理解し、うまく機能していなかった‘何か’を探っていく心の作業の場であると言えるでしょう。本当に地道で根気のいる作業です。目で見て配線を変えられる訳でも手術で取り除ける訳でもありません。時間も労力も(そしてお金も)かかります。信頼できるとご自身が思えるカウンセラーとじっくりと取り組んでいただけたらと思います。
はじめにカウンセラーは魔法のようなアドバイスはしませんと言いましたが、もちろん専門家として相談者の心に寄り添い、状況を捉えた上で必要なアドバイスはお伝えしていきます。けれどもそれは、アドバイスがその方にしっかり合うものであるために、まず相談者がどのような状況の中どんな風に困っておられるのか、何が必要でどういう見通しを持てばいいのかなどをある程度見極めてからということになります(場合によっては心理検査なども取らせていただきます)。「何のアドバイスももらえない」というのはまだカウンセラー側がしっかりと相談者のことを理解しようとしていた段階で起きていた場合も少なくないかもしれません。カウンセラーとして説明不足であることをお詫びしますが、ただ、カウンセラーと相談者はどちらかがどちらかに一方的に行う関係ではありません。共に取り組む共同作業者です。どうか疑問や不満が出てこられた時にはまずはカウンセリングの場で伝えてください。もしかするとそこから何か展開が生まれるかもしれません。
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いかがでしたか。
次回も心理士の小野から、今度は遊戯療法に関して紹介いたします。