来年度政府予算と財政再建の到達点~これから深刻化する2つの大課題~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


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来年度政府予算と財政再建の到達点~これから深刻化する2つの大課題~

 

 通常国会が始まり、今年度補正予算の次は、いよいよ来年度2018年度の政府予算の審議に入ります。先進国最悪の日本の財政をどうするかについては、これからいろいろと論じていきますが、まずは現状がどうなっているか、今回は来年度予算を中心に見てみます。

 最初に、来年度予算とプライマリーバランスとの関係について、数字を入れた図をお示しします。ここに書かれた数字だけで、概ね、来年度予算の重要な数字がカバーされています。

 

●来年度予算の特徴

 財務省は来年度予算の特徴として、①総選挙時に安倍政権が公約した「全世代型社会保障」に向けた「人づくり革命」、②経済の生産性を高める「生産性革命」、③財政健全化の3つを挙げています。

 ①は、来年度は保育への受け皿拡大や幼児教育の段階的無償化、給付型奨学金の拡充などが盛り込まれていますが、「人づくり革命」が本格実施されるのは、2019年10月の消費税率10%への引上げに当たり、その増税分の使途の変更によって生み出される財源を活用できる2020年度予算からです。

 ここでは以下、③の財政再建の進展状況を取り上げてみます。

 まず、来年度の国の一般会計予算の規模は97.7兆円と100兆円に迫っていますが、前年度に比べてみれば+2,581億円と、ほとんど横ばいです。

 膨張を続けている社会保障費がこの予算全体の数字のうち、3分の1を超えました。他の経費はほぼ横ばい、防衛費は現在の安全保障環境の状況を受けて少し増えました。

 国債費、つまり、国の借金の処理に充てる経費が予算全体のほぼ4分の1を占めています。

 このうち、国債発行残高の60分の1に相当する「債務償還費」とは、日本では60年かけて国債を償還する世界に例のないルールが営まれているので、毎年度、残高の60分の1ずつ、元本償還費を一般会計から支出しているものです。来年度は少し減っています。国債残高が増え続けているので、増えるのが普通ですが、今回は特殊要因がありました。過去の減税の際に発行した特別の国債の償還が前年度で終わったからです。傾向としては毎年度、増え続けています。

 国債費のうち、もう一つの利払費は、国債の金利負担ですが、さすがにこれだけほとんどゼロ%の長期金利の状況が続いているので、前年度よりも減りました。それでも9.0兆円あるのは、過去の国債金利があるからです。あとでも触れますが、今の異常な低金利が正常化すれば、この利払費は猛烈な勢いで増えていきます。

 制度的に支出額が決まってくる歳出項目は「義務的経費」と言って、国債費、地方交付税交付金、社会保障費の3つが該当しますが、これら3つ以外の、裁量的に増減できる経費は予算全体の4分の1しかありません。財務省主計局は、予算編成は「4分の1査定」だと自嘲しています。

 次に、歳入ですが、税収は前年度よりも1.4兆円増えて59.1兆円と、60兆円の大台に近づいています。そのうち、消費税が所得税に次ぐ税収をあげる基幹税制へとウェイトを上げてきています。

 国の借金である公債金は前年度より減りました。歳入のうち借金の割合である公債依存度も低下しました。

 公債金収入のうち、その大半を占めるのは、インフラ整備など将来に資産を残す財源として財政法第4条で発行が許されている建設公債ではなく、将来にツケだけを残すものとして財政法で禁じられている特例公債、つまり、赤字国債となっています。これは消費税収の全額を社会保障に充てても賄いきれないことによって膨らんできたものですが、後述の社会保障支出の抑制と税収の増加で、減らすことができています。

 財政再建の中間目標とされているのがプライマリーバランスで、それが達成された状態とは、新たな借金(公債金)を、借金返済にかかるおカネの金額(元本償還と利払いを併せた「国債費」)まで抑え込んだ状態、つまり、借金返済の支出以外の財政の支出が、借金以外の税収などで賄われている状態を意味します。

 来年度は、国のプライマリーバランスの赤字は、前年度よりも縮小します。

 冒頭に掲げた図は、プライマリーバランスとは何かを示したものです。

 次に、国債発行の状況をみてみましょう。

 国債のうち、税金で元本と利子を返済しなければならない国債を「普通国債」と言いますが、その残高は来年度末で883兆円にのぼります。これが増え続けており、うち、前述のように本来は禁止されている赤字国債が604兆円と、その大半を占めています。 

 国と地方を併せた長期債務残高は来年度末で1,108兆円と、GDPの2倍近くになります。

 来年度の国債発行計画ですが、注意が必要なのは、それが一般会計予算に計上される新規の公債だけではないということです。前述のように日本では60年償還ルールが営まれていますから、例えば10年満期国債の10年の満期が来ても、そのほとんどは借換債という国債を発行して元本を償還しています。来年度の国債発行額の3分の2以上が、この借換債で占められています。

 

●財政再建の進展状況

 以上の来年度予算をみる限り、財政再建は全体として進んでいるように見えます。財務省の人々は「ワニの口」という言い方をしますが、これは毎年度の歳出額と歳入額のそれぞれを折れ線でグラフ化すると、両者の差がワニの口のように広がってきたことを指します。このワニの口が下図のように、少し、ふさがってきています。

その大きな要因は、来年度が3年度にわたる「経済・財政再生計画」の最終年度であり、そこに盛り込まれた、「16年度~18年度の3年間での歳出全体の増加額は+1.6兆円に抑制する」、「うち社会保障は+1.5兆円に抑える」という目標を達成したことです。

この計画は、2014年の11月に、安倍政権が消費税率2%引上げ延期をもって解散総選挙をしたことを受け、それでは財政が不安だからと、翌15年に財務省が働き掛けて作ることになった計画です。これによれば、社会保障以外の歳出は3年間では+0.1兆円、つまり、1,000億円しか増やせませんから、相当厳しい歳出抑制だといえます。

社会保障費は社会の高齢化の進展などで、自然体だと毎年度、概ね1兆円ずつ増えていくものとされてきました。これを5,000億円の増加に抑え込んできたというのも、相当な歳出抑制策といえます。

安倍政権が予算編成をするのは今回で6度目ですが、この3年計画の前の3年間も、社会保障費は5,000億円の増加に抑えてきましたから、この抑制策は6年続いています。

こうした努力と税収増で、安倍内閣発足以来、国債発行額も6年連続の減額となりました。

来年度の税収59.1兆円については、かつてバブルの頃、1990年度に60兆円の大台を越え、その年度の赤字国債発行額はゼロを達成しましたが、来年度はその大台に近づくところまで来たものです。90年度の翌年度の91年度は59.8兆円でしたので、それに次ぐ3番目の税収です。しかも、当時は法人税率は今よりももっと高く、譲渡所得税がバブルで大幅に増収でしたから、いかに今の税収が好調かがわかります。現在は、消費税が税収に大きく貢献しています。

歳出抑制努力は社会保障以外にも、「量より質」ということで、防衛装備品の調達改革(民生品の使用、まとめ買い、原価の精査など)、財政投融資の活用(低金利を活用した高速道路整備の加速、財政融資1.5兆円)、技術の活用(AIコンテナターミナル、ドローン、下水道にIoTなど)等々、色々な工夫を行うことで全体として横這い予算を実現しています。

歳出を増やさずに政策効果を確保するということでは、来年度はいわゆる「出国税」、つまり、400億円の税収が見込まれる「国際観光旅客税」の創設(顔認証ゲート、CIQ強化、多言語解説などに充当)も話題になっています。

 

●これまでの財政再建に向けた努力

 過去を振り返ってみると、財政再建努力は多くの内閣が取り組んできましたが、特に大きなものを挙げるとすれば、まず、橋本内閣における1997年の「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(財政構造改革法、97年11月成立)があります。ここでは、国と地方併せた財政赤字の対GDP比率を3%以下にすることなどが掲げられましたが、アジア通貨危機や大手金融機関破綻などの経済情勢のもと、実施されたのは98年度予算だけで、98年12月の「停止法」で凍結されました。

 次に挙げられるのが小泉内閣の時の2006年の「骨太2006」です。ここでは、2011年度までに国と地方併せたプライマリーバランスを黒字化することが掲げられました。その後、第一次安倍内閣へと引き継がれますが、当時から安倍総理は「まずは経済成長、その後に財政再建」論者で、社会保障費は毎年度、自然体よりも▲2,200億円抑制する一方で、経済成長による税収増で財政再建を図るという「上げ潮路線」が採られることになりました。

 この方針は3年間実施されましたが、2008年のリーマンショックで、09年6月に財政健全化目標を変更することになり、まずは景気回復、国と地方を併せたプライマリーバランスの達成は今後10年以内に、となりました。

 結局、その後、この目標は、つい最近の昨年の総選挙まで、2020年度達成とされ続けることになります。

 いずれにしても、以上の改革を通じて実感されたのは、増え続ける社会保障費は制度を変えないと抑制できないということでした。そこで社会保障の改革メニューまで踏み込んだ計画として、前述のように、現在の安倍政権下で消費税率引上げ延期を受けて決めた「経済・財政再生計画」でした。ここでは、2020年度までにプライマリーバランスの黒字化、政府債務残高の対GDP比率の安定的引下げが、前述の3年間にわたる1.6兆円、1.5兆円への抑制策とともに盛り込まれました。

ただ、今回の消費税の使途見直しで財政改善のベースラインが下がり、2020年度のプライマリーバランス目標の達成は困難になりました。これを受けて「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府)が改定され、本年1月23日の経済財政諮問会議に提出、プライマリーバランスの達成目標をどの時期に再設定するかを、本年6月の骨太方針で決定することとされました。この点については、稿を改めて論じます。

 

●「日本の財政、不都合な真実」と2つの大課題

 それでも、これまでの努力が功を奏し、消費税率の引上げが2019年10月に予定通り実施されれば、歳出構造として、歳出が経済成長による税収増とほぼ見合った伸びになるというところまで到達したと、財務省は説明しています。

 しかし、これは当面の間の話です。今後、次の2つの面で財政は大きな爆弾を抱えており、これを解決しなければ、中長期的に、日本の財政は大変深刻な事態に直面します。

 一つは、2022年から団塊の世代が後期高齢者世代に入り始め、2025年には全員、この世代になるという「2025年問題」です。医療費と介護費が爆発的に増大することになります。

 医療費の一人当たり国庫負担 (2014年)は、65~74歳は7.8万円なのに対し、75歳以上は35.6万円と、約5倍です。同じく介護費は、65~74歳で1.5万円なのに対し、75歳以上は14.5万円と、約10倍です。2022年までに、これに耐えうるような社会制度改革を実現しなければならないとされます。

 ただ、私の提唱する「松田プラン」では、個人金融資産を活用した世代内共助や、永久国債オペレーションで生み出す社会保障バウチャー、さらには、ボランティアを労働債権としてポイント化する「ボンド・ボンド」構想などの工夫によって、国民負担の大幅増を回避できるいくつかの方策を提案しています。これらは機会を改めてご紹介します。

 もう一つは、金利の正常化がもたらす利払費の爆発です。

 現在は、アベノミクスの異次元の金融緩和で長期金利の上昇を力づくで抑え込んでいますが、ほぼゼロ金利といえる国債金利はいかにも異常であり、長続きしません。長期金利は普通なら3~4%程度です。国債発行残高が約900兆円ですから、単純計算で、現在よりも金利が1%上昇しただけで利払費は約9兆円、つまり、防衛費の2倍近くも増える計算になります。2%上昇なら20兆円近くです。

 異常な低金利のもとで初めて回っている日本の財政は、いかにも異常です。

 しかし、これだけのオーダーでの財政爆発となると、これはもう、①歳出削減か、②増税か、③経済成長か、という財政再建の通常の選択肢の範囲では対処不可能ではないでしょうか。

 ストック面で莫大な国債発行残高を抱えたことがもたらすこの状態をブレークスルーするには、バランスシート上でのストック処理という抜本的な対応に、従来の発想を超えて踏み込むしかないと思います。

 この点について「松田プラン」では、永久国債オペレーションを通じた対策案を用意しておりますが、これも稿を改めて世に問うていきたいと思います。

 今後、発信してまいりますので、ご期待ください。

 

松田まなぶのビデオレター、第78回は「来年度予算政府案への問題提起」

チャンネル桜1月23日放映。

 こちら↓をご覧ください。

 

 

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