松田まなぶのビデオレター、第29回「マイナス金利と実質金利、財政再建の負担を如何に分担するか」。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 金利がマイナスになる、といっても銀行から日銀の当座預金への新規預託分の話で、一般の国民が関係する市中金利のことではありません。
ただ、私たちはすでにアベノミクスのもとで、実質的にはマイナス金利を経験してきました。
それは、金融政策で金利を抑制して超低金利状態を作り、インフレ率を上げていくアベノミクスのもとで生じている実質金利がマイナスという状態です。
それによって国債の金利負担が抑制され、財政状態が改善する。

今回は、こうしたアベノミクスの基本思想について取り上げてみました。
松田まなぶのビデオレター、第29回は「マイナス金利と実質金利、財政再建の負担を如何に分担するか」。チャンネル桜、2月23日放映。
こちらをクリックすると、今回の松田まなぶの動画を見ることができます。



そもそもアベノミクスが取り組んでいるデフレ克服とは、実質金利をマイナスにする政策です。下図をご覧ください。


<実質金利=名目金利-予想インフレ率>
ですが、デフレのもとでは、実質金利がプラスでした。
 これに対し、実質金利がマイナスとなると、債務者がおカネを借りて投資しやすくなり、人々はおカネをもっと使うようになるわけです。
 
 しかし、図にもありますように、債務者がトクをして、債権者が損をするということも同時に起こります。日本最大の債務者とは、1,000兆円にものぼる債務を背負う政府です。日本最大の債権者とは、1,700兆円もの金融資産を有する家計です。
 実質金利がマイナスということは、預金者や国債保有者から所得を政府に移転して、財政を改善することになります。

 ひどいではないか、と言われるかもしれません。事実上の隠れ増税だという指摘もあります。しかし、この政策でいずれ経済成長率が上がっていくのであれば、消費増税で景気を冷やすよりもベターでしょう。

 超高齢社会の負担を将来世代に付け回す姿は是正すべきですが、まずは、消費増税を飲み込める経済状態を作り出すことが重要です。
 社会の高齢化で社会保障給付が爆発的に拡大していきます。その財源の大半が赤字国債、つまり、次世代が負担するという状態を是正するのが消費増税です。消費税の税収は全額、社会保障給付(年金、医療、介護)や少子化対策に充てられていますから、消費税とはそもそもが、国民から国民へのおカネの移転です。
 
 このおカネの移転の原資を、高齢世代、現役世代、将来世代のいずれにどの程度配分するか、それを調整するのが消費税率です。
 この中で、消費税率引上げで起こるのは、将来世代の負担が減るということです。将来世代まで含めた国民全体では、国民負担が増えるということにはならない性格のものともいえます。

 

 問題はここからです。だからと言って、こうした財政の論理だけで問題解決をするのかということになります。
 消費税率引上げだけで調整すれば、税率は25~30%になりかねません。歳出削減との組み合わせるといっても、それは年金の減額か医療や介護の自己負担の増加ということですから、国民負担増である点では同じことです。
 これをまともにやっていると、巨額の国民負担増で肝心の経済がダメになります。政府が描いている財政再建の前提は、名目3%かそれ以上の経済成長ですが、これが実現せず、元も子もなくなります。
 だからこそ、今は、デフレから完全に脱却し、政府が想定する「経済再生ケース」に経済を近づけることが最優先の政策になります。



 そのためのアベノミクスです。確かに、金利の抑圧で「隠れ増税」かもしれません。
 しかし、隠れ増税でも、それは経済成長につながるものです。単なる増税では経済成長につながりません。
 どちらがいいかと問われれば、経済成長につながる「増税」のほうがベターでしょう。

 そもそも消費増税は事業者にとってコストアップ要因の一つです。石油価格の上昇もそうです。コストアップ分を売上価格に転嫁するか、他の合理化による経費削減で乗り切るかは、個々の経営判断によります。モノの値段そのものは需要と供給で決まります。ちなみに、今の原油安は消費税率2%分にも相当するとされます。

 欧州では付加価値税は内税方式ですから、このことが理解されやすいです。しかし、日本は外税方式が中心ですから、消費増税の消費者マインドへのインパクトが大きく、事業者からみれば十分に転嫁できないという問題が先鋭化します。

 大事なのは、事業者が他の合理化で乗り切るか、モノの値段を上げるかという、いずれかの選択がより容易な経済状態を作ることです。少なくとも、物価が上昇していない状態では、転嫁という選択肢はとれないことになります。

 そういう経済を先ずは作ろうというアベノミクスのメッセージは正しいといえます。
 「経済再生ケース」はあまりに楽観的と言われるかもしれません。
 しかし、その実現に向けて、チャレンジし、生産性を上げよう、一億総活躍社会で女性も高齢者も労働参加率を上げよう。その先に消費増税を乗り越えられる経済を創ろう。
 今はその局面だと思います。