松田まなぶの論点 インフラ輸出支援で戦略的投資国家ニッポンへ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

~4月2日衆院国土交通委員会「株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案」審議での松田まなぶの質問のポイント~

〇課題先進国 日本の3つのリーダーシップ 

 人類全体がいずれ共通に直面することになる課題に世界最初に直面する国として、日本が世界に対して発揮できるリーダーシップは、①アジェンダ・シェイピング・リーダーシップ(何が課題であるかを定義する国)、②モデル・ビルディング・リーダーシップ(その課題の解決モデルを世界で最初に構築する国)、③コラボレーション・リーダーシップ(そのモデルに基づいて各国の課題解決にともに向き合う国)の3つである。
 これは、何が課題であるかを定義するところから始まる強さ。
 あらかじめこの分野で、この産業でというものではない。
 多様に生じうる課題やニーズに対して、なぜ、国交省だけ対応するのか、非常にちぐはぐ。
 あらゆる問題がアジア太平洋共通のプラットホームで解決されねばならない時代。
 いわゆるインフラ輸出について、各国では、政府のもとに、統合的な役割分担体制。まさに国家全体の戦略として体系的に取り組むべき分野。
⇔日本は、省庁主導で「中央分権」の国。戦後システム。
 ⇔安倍政権は「国家」。国家主導。地方の特区にまで「国家戦略特区」。
 国際投資戦略こそ、国家主導の分野。
⇒積み上げで、できるところから徐々にやっていくのではなく、全体的な司令塔があって、そのもとにインフラ投資について国土交通省が所管する分野はこうする。それが順番のはず。違和感あり。

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(問1)一般に、こうした海外インフラ投資について、国がカバーすることになじむリスク特性として、交通と都市整備に分野が特定されることにはならないのではないか。交通や都市整備が有するリスク特性は、他のインフラ分野とどのような違いがあるのか。海外には、こうした分野特定型のインフラファンドの事例はあるのか。

・日本の資源確保のためにも同様の仕組みが必要なのではないか。
・今後、アジアのインフラ投資で最も大きな金額が予想されるのはエネルギー(電力)ではないか。確かに、電力が需要の想定が容易なのに対し、交通や都市整備は需要想定に不確実性があるから国がカバーするという理屈はある。
⇒しかし、リスクとか投資採算性の観点だけではないはず。国の外交戦略の次元の問題としてどう考えるかということではないか。
・日本にも、その発想が必要な時代。
・資源獲得など国家戦略機能が日本は不十分。例えば資源環境戦略。病院医療もある。全般的な投融資戦略機能は国交省が担うものではない。
・同じ水道でも、国土交通省が所管する下水道は、本機構の都市整備でカバーされるのに対し、厚労省所管の上水道は都市整備にも入り得るのに、本機構の対象ではない。まさに縦割り省庁主導体制を象徴するもの。
・日本の対外純資産のポートフォリオを改善し、「戦略的投資国家」へ。まずは、その司令塔を確立すべきなのではないか。

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「稲葉・国土交通省国際統括官」

(問2)国土交通省関係のインフラ事業に限定して設立した理由如何。政府全体として、最初からより広く対象をとってこうした機構を設立したほうが、国家戦略遂行の上で機能的になるのではないか。

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「太田昭宏・国土交通大臣」

(問3)他のインフラ分野については、いずれ必要に応じて、また新しい機構を別の省庁所管でつくって並立させる可能性を視野に入れているのか。それとも、所管を内閣等に移して、本機構は発展的に解消することを想定しているのか。


〇ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)の視点
・SWFは、運用資産が2~3兆ドルに及ぶと言われる。アジア諸国の場合は外貨準備、中東諸国やノルウェイなどは天然資源が原資。
・アブダビ投資庁、シンガポールの政府投資公社、中国投資有限責任公司(こうし、こんす)、ロシア石油安定化基金、カタール投資庁、米国やカナダにも。
・プライベートエクィティーやヘッジファンドにも投資。
・エネルギーインフラ分野への投資が多い。
・情報開示が少ない、政治的外交的手段として使われる。中国は覇権。市場のルールとは異質。

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「岡村・金融庁参事官」

(問4)台頭してきたSWFに対しては、規制強化論もあるが、最近、国際的な場では、どのような論議が行われているのか。

[金融庁より、近年は規制強化は議論されていない旨、答弁]
⇒松田より、「それは今やSWFが世界経済の発展に大きく貢献している証左。」


・日本の「アリとキリギリスの物語」(モノもカネも基軸通貨国の米国に提供しながら、外貨準備は米国債で、有利な運用になっていない。)→アジア新興国も。

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「山崎・財務省国際局長」

(問5)シンガポールのGICのように、米国債よりも有利な分散投資を求めて外貨準備を活用したSWF、中国の中国投資有限責任公司(CIC)のように外貨準備資産の投資先の集中リスクや為替リスクをヘッジすべく設立されたSWFの事例があるが、日本の外貨準備については、そのような必要性は認識されていないのか。

[財務省国際局長より]日本の外貨準備の場合、その負債として短期資金を円建てで調達しているので、リスクのある分散投資は困難との答弁。
⇒松田より、「その通りであり、外貨準備がいくら多額だからといって、政府短期証券で同額の負債調達をすることで外貨準備を保有している日本の場合、米国債を色々な財源に活用すべしとの俗説に与すべきではない。だから、今回設立しようとしている機構(官民ファンド)の財源も、政府案の通り、産投資金がふさわしいということになる。」

〇年金資金の活用

・他方で、日本には巨額の年金資金がある。しかし、その運用が国債に偏っていることが問題。
・コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)など米投資ファンドは、集めた資金の半分以上が年金基金とされる。
・日本の公的年金は一切、オーターナティブ投資をしてこなかった。特にPE(プライベート・エクィティー)には入れていない。日本の年金運用の考え方はリクイディティー(流動性)に偏っており、換金しようと思ったらすぐに換金できるもの。期間も1~3年が多い。
・PEファンドは投資期間が5~10年でリクイディティーはほとんどない。
・欧米ではPEファンドに出資している投資家のかなりの部分が公的・私的年金。
・例えば、英国年金保護ファンド(PPF)は、以前から、不動産、プライベートエクィティー、インフラは当然の運用対象。さらに最近では、農地や森林、エマージングマーケット債券まで加え、オルターナティブ投資の比率は20%を基準。
・ちなみに、PEファンドは年間ベースで15~25%という高いリターンのケースが多い。⇔日本の年金の運用成果は2~3%。
・年金資金は本来、一国の産業投資。国民経済の成果の果実を分配するものとして年金。国債への運用は、将来の富、タコが自分の足を食っている。
・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世銀と組んで途上国のインフラ投資をする方向との新聞報道(3月9日日経朝刊1面)がある。
GPIFは、国際金融公社(IFC)と日本政策投資銀行と共同で始めるとのことだが、IFCはまさに、途上国のインフラ事業に携わる企業などに投融資している。
IFCは世界の年金基金や政府系ファンドとの共同で途上国に投融資してきた。世銀グループとして政治リスクを最小に抑えるノウハウが評価されている。
GPIFも高リスクであっても一定の高リターン運用が必要。ここに乗り出すのは評価できる。
・130兆円と世界最大の機関投資家の資金を日本自らの国家戦略として活用すべきなのではないか。
・その際、本機構はどのような位置づけになる可能性があるのか。この文脈では、むしろ、IFCと協働する方向は考えられないか。本機構はその上で意味があるのか。別の仕組みや方法が考えられることにならないか。

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「藤井・厚生労働省官房審議官」

(問6)例えばGPIFの年金資金などを、日本の主体的な国家戦略として、海外インフラ投資に活用することは考えられないのか。仮に、そのような道を開いた場合、本機構はどのように位置づけられる可能性があると考えられるか。いずれにしても、年金資金を取り込む仕組みを考えるべきではないのか。

[厚生労働省審議官よりネガティブな答弁]


・OECDも、年金ファンドなどの機関投資家は、債務が長期ゆえ、運用も長期として長期的に高いリターンが得られるものを対象に資金を振り向けるべきだとし、オルタナティブ資産を中心に投資の多様化を提言。
・インフラ投資は、本来は、年金のような長期資金が主導する分野。

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「池田・金融庁審議官」

(問7)日本の民間金融機関は世界インフラ共同主幹事ランキングで上位を占めており、プロジェクトファイナンスは量的には世界トップクラスとなっているが、それに見合うだけの運用成果、リターンをあげているのか。欧米の金融機関と比べてどうか。

[金融庁より、日本の銀行の場合、国内運用よりも、むしろ、こうした海外向け運用のほうが収益性が高いものとなっている、との答弁]
⇒松田より、「大変力強い答弁をいただいた、アベノミクスで日本の長期金利は力づくで低位に抑えられているから、国内では利ざやが小さいことを心配している、こうした海外インフラに日本の銀行はふんだんに資金を供給してくれるということになる。」

○官民ファンド

・最近、政府出資によって機構を設立する傾向。官民ファンドが流行。今回の機構設立も、クールジャパン機構に続くもの。

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「中原・国土交通大臣政務官」

(問8)近年、我が国では「官民ファンド」の設立が相次いでいるが、その背景、及び、政策ツールとしての評価について、政府としての見解如何。

・官民ファンドには色々と批判があり、リスクテイクは民間で、が基本なのは原理論としてはその通り。
 しかし、日本には2つのネック。
 一つは、年金基金の運用が国債に偏っていること。これは先の厚生労働省からの保守的な答弁が示すとおり。
 もう一つは、個人がリスクマネーを出さないこと。かつて護送船団方式の銀行は、国がリスクカバーしていたので、リスクマネーの主体。家計はそこにノンリスクで預金。護送船団が崩れたのに、家計の行動は以前のまま。
 それを補完するものとして、日本では官による呼び水は不可欠。

○政策効果
・ならば、今回の官民ファンドがそれだけの効果をあげ得るものなのかの視点からの議論が必要。
・欧米や中国韓国との受注競争に日本が負け続けてきた原因は何なのか。
 本機構は何をカバーすることになるのか。これら国々には本機構と似たようなものがあるから、負けてきたといえるのか。

(問9)本機構が存在しないことによって現実に生じた支障、獲得できなかったプロジェクトの現実の事例に即した説明として、なぜ獲得できなかったのか、本機構があればどうだったと想定されるか。

〇JBICの機能強化

・私自身がかつて、バヌアツの植林事業への支援で経験したように、日本の民間事業者が途上国で良い案件を発掘しあたためてきたのに、JBICの機能が不十分なために頓挫している例が多い。
・その理由としてソブリンリスクが挙げられている。他方で中国は、次々と進出。こうした案件をさらっていきかねない。
…バヌアツには、日本人が現地の関係者とともに20年かけて携わってきた植林事業があります。原木がようやく育ち、質の高い木材を供給できる段階に至っていますが、日本からは、その後のさらなる植林も含め、なかなか必要資金が供給されないでいます。そこに資金提供を申し出ているのも中国です。
 日本にとっては貴重な木材資源の確保、世界にとっては地球環境への貢献、現地では安定的な雇用の創出といった意義ある事業も、果実を得るのは中国ということになりかねません。
 中国は、例えばマレーシアやインドネシアなどで、広大な森林を火で焼き、パームオイルがとれる油やしの木を植えるということを行っています。パームオイルはおカネになるそうです。しかし、その結果、生態系が変わり、気候変動にも影響を与え、肥料も土壌汚染の原因になるなど、地球環境にははなはだ良くないようです。
 バヌアツでの植林事業は淡路島ほどの面積のサント島で行われてきましたが、中国はそこで育った大量の原木を買い取ることを働きかけているようです。
・まずは、JBICの機能を強化すべきではないか。

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(問10)本機構の設立よりも前に、全分野を対象とする形で、JBICの機能強化を図るべきだったのではないか。そもそもJBICが出資機能と融資機能の両者を果たせば、こうした新たな機構の必要はないのではないか。「拡大JBIC」構想。融資と出資は利益相反なのか。国全体の政策遂行という観点から支援事業が選択されるという性格上、民間とは規律のあり方が自ずと異なるのではないか。本機構も、案件決定は事実上、国が行っており、国がJBICに出融資の両者を要請することで進められるものなのではないか。

〇官民一体体制の構築の仕方。
・例えば港湾事業につき、
 港湾インフラは公共事業としてJICAが現地政府に円借款を供与し、
 港湾運営部分については民間の事業として現地の民間企業に対して本機構が出資して、JBICや銀行が融資して対応。
・JICAがすでに現地民間に対する海外投融資機能を有していることに鑑みれば、公共事業は円借款、民間はこの機能という形での設計はJICAが担えるものであり、「拡大JICA構想」で対応できるということにはならないのか。
・米国、フランス、中国では政府の委員会のもとに、各省庁や公的金融機関などが支援体制。
・ドイツでは、経済協力開発省
 KfW(Kreditanstalt für Wiederaufbau復興金融公庫)グループ(KfW開発銀行…相手国政府を支援、ドイツ投資開発公社[DEG]…民間を支援、KfW Ipex銀行[輸出信用とプロジェクト金融])
  ドイツ国際協力公社…技術支援
  ユーラーヘルメス…投資保険でリスクカバー その他、政府の介入でリスク分担する機関

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「小澤・内閣官房内閣参事官」

(問11)途上国の特定のインフラ・プロジェクト支援について、資金面を含め官民各界の役割分担等につき、全体像を整合的に設計し、調整する日本側の主体はどこが担い、どのような体制になるのか。機構が政府と調整するのか。政府が調整し、機構に指示を出す形か。

〇都市鉄道
・アジアでは、国力向上と大都市への人口集積(人口爆発都市)。
 20世紀の日米欧が経験したのと同様、道路渋滞、交通事故、排ガス問題、エネルギー消費の問題。
 道路投資は進んでも、自動車保有の増加が上回り、交通問題は悪化の一途。
 道路・自動車主体から鉄道への転換が求められているが、鉄道投資は進まず。
・東京圏では、人口3,000万人、路線の長さは2,500Km、利用者4,000万人/日の鉄道は人類史上最大。
 東京圏を中心に日本の都市鉄道は質量ともに世界一。
・新興国各国は東京圏の鉄道ネットワークに憧れと信頼。自国での展開に期待。
 しかし、厳しい国際競争。中国・韓国に車輛の安さ等で敗けてきた。
 新興国各国は鉄道ノウハウをあまり持っていない。細部にわたる個別具体的な提案と実行を日本に期待。
 ⇒ターンキー方式、ターンキー契約が有効では。
 システムが完全に完成していて、すぐに使い始められる状態で渡す。

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「太田昭宏・国土交通大臣」

(問12)本機構の運営に当たり、日本のどのような強みを、どのように活用していく方針か。
 1.都市鉄道は、日本の質量ともに世界一の東京圏の鉄道ネットワークについて、システムとしての優位性という強みを発揮していくのか。
 2.都市整備についてはどうか。
 3.リニア新幹線について
:JR東海の葛西会長は正論3月号で、今秋にも着工するリニア新幹線につき、その高性能の高コストの超電動リニアシステムの先端技術が効果を発揮するのは、世界の中でも、東京-名古屋-大阪間と、ワシントンDC-NY間しか見当たらないとのこと。この日本の先端技術を米国東部海岸に提供することで日米同盟に対する日本の貢献のシンボルにできるとの考え方について、大臣の所見如何。

[太田大臣より、この質問の趣旨に即した答弁、米国へのリニア輸出については、JR東海が進めるのであれば、国としてぜひともバックアップしたい旨、答弁]