本論文は、AMH低下と精液所見低下がリンクすることを示しています。
Fertil Steril 2024; 122: 278(デンマーク)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.03.018
Fertil Steril 2024; 122: 266(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.139
要約:2022〜2023年にデンマークの不妊クリニックを訪れた不妊男性400名を対象に、精液所見とAMH値の関連を前方視的に検討しました。なお、各種疾患のある方は除外しました。各群100名ずつ4段階に層別化した結果は下記の通り。
A群 B群 C群 D群 P値
平均AMH値(ng/mL) 2.8 4.6 6.4 10.8 〜
精子濃度(万/mL) 800 < 1040 < 1100 < 1300 0.006
総精子数(万) 2910 < 3820 < 4440 < 5570 0.02
精子運動率(%) 41 < 57 50 53 0.04
精子直進運動率(%) 31 < 44 35 40 0.03
精子濃度(万/mL) 200未満 200~1600 1600以上 P値
AMH値(ng/mL) 4.3 < 5.3 < 6.0 0.02
精子運動率(%) 20%未満 20~42% 42%以上 P値
AMH値(ng/mL) 4.3 < 6.0 < 5.5 0.008
解説:不妊症の生涯罹患率は最大17.5%との試算があります。男性不妊が約半数を占めています が、ほとんどの不妊男性には治療手段がありません。AMHは、女性の卵巣予備能の評価に用いられる指標であり、男性不妊の評価には用いられないのが一般的です。しかし、胎児期の男性のAMHは妊娠初期のミュラー管(子宮や卵管になる部分)退縮に関与しており、男性の正常な性分化に不可欠で、未熟なセルトリ細胞によって合成されます。成人男性でのAMH値の意義については十分に解明されていませんが、ミュラー管遺残症候群などの性分化異常がある場合には、AMH値が有用な診断ツールとなる可能性があるとされています。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、AMH値低下の男性は精子形成障害の指標となる可能性があることを示しています。
コメントでは、男性のAMHと精液所見の関連を示した本論文の研究を絶賛していますが、より大規模な研究が必要であるとしています。