嬉しい報告とQ&A3874 第二子治療で相談 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q この度無事第一子を出産しましたのでお礼を、また第二子に向けてご相談したくメッセージを送らせていただきます。

39歳時に貴院で未受精卵の卵子凍結を行いました。当時でAMHが0.8弱と低かったため2回採卵をしましたがいずれも2個ずつしか採取できませんでした。

その後ご縁に恵まれ結婚し、3ヶ月後より貴院にて数回人工授精をさせていただきました。当時40歳でした。ちょうど不妊治療が保険適用になったことを受けて他院にて体外受精をスタートしました。他院で1度採卵し、やはりその際も採取できた卵子は2つのみでした。同周期にそのまま初期胚(3日目13G2)を新鮮胚移植しましたがhCGが40前後までしか上がらず化学流産でした。幸いもう1つの卵子は無事5日目胚盤胞(4AA)で凍結できたので、1ヶ月あけて自然周期にて移植し、この度出産までたどり着きました。

このように書くとわたしは比較的スムーズに出産まで辿り着けたケースなのかなと思いますが、1番効果があったと思うのがニュートラルなメンタルを最初から最後まで保てたことだと思います。先生とリプロの公式ブログを卵子凍結をした頃より愛読し、まさに「人事を尽くして天命を待つ」精神でいました。性格的に疑問を残すと気になってしまうのでリサーチはしっかりしましたが、不妊治療はまだまだ未解明な部分が多く、悩んでもしょうがない部分はスパッと気持ちを切り替えるようにしました。ブログを読んでいると正しい知識が増えていき、いつに間にか「自分にできるところはしっかりやり、疑問はブログを読んで解決して、どうしようもないところは悩むだけムダ、血流も悪くなるだけで良いことなし!」とある意味達観したような気持ちでいれました。また、転院する際に「保険診療を受けられる間に他院で一度やってみたい」とご相談したら嫌な顔など全く見せず快く送り出してくださりました。そのため「もし保険診療でうまくいかなくてもリプロに戻って来れる」という安心感がありこれもメンタル的にとても大きかったと思います。素人感覚ですが、不妊治療は本人のメンタルがボロボロでも治療さえすれば誰でもうまくいくようなものではないと感じています。わたしにとって先生とクリニックのブログは、時に力強く正しい方向にグイッと引っ張り、時に縁の下の力持ちのようにどっしりとメンタルを支えてくれるものでした。お陰様で自分の命よりも大切なものをこの腕に抱くことができました。本当にありがとうございました。

また、第二子に向けてご相談させてください。
①貴院で凍結中の未受精卵を使いたいと思っています。第一子が帝王切開だったこと、しばらくは授乳を続けたいことなどから、治療スタートは42歳後半を予定しております(卵子は39歳時のもの)。第一子は、上記記載の通り胚盤胞を自然周期で移植しており(AHA、ヒアルロン酸有り)、排卵日より1日3回1錠ずつデュファストンを6週目ごろまで飲んでいました(4週0日時点でデュファストンは不要だと言われましたが、お願いして追加してもらった経緯があります)。これがわたしの必勝法なので第二子でも踏襲すべきかと思っているのですが、貴院でこのような治療は可能でしょうか。特に、未受精卵でも自然周期での移植ができるのか気になっております。
②貴院で2回採卵していずれも2個ずつ凍結しておりますが、移植する際に1個ずつ融解することは可能でしょうか。それとも2個融解し(いずれも初期胚なり胚盤胞なりに育った場合)2段階移植ないし2個移植するか、1つのみ移植して残り1つは再凍結するしかないでしょうか。再凍結&再融解のダメージが気になっております。
③39歳時の胚盤胞ですと2016.8.9「☆女性の年齢別染色体異常頻度 その2」では染色体異常率は52.9%です。また、2015.4.11「☆年齢別流産率」では、40歳で36%が流産、子宮外妊娠、死産となると記載があります。仮に39歳だと35%になると想定しますと、もし4つの未受精卵が全て胚盤胞になれば、「約2個が染色体正常、約0.7個(2個x35%)は流産などしてしまうので、実質1個ほどの胚盤胞が最終的に産まれてこれる確率」と読み解けば良いでしょうか。

 

A 

①未受精卵を自然周期の排卵日当日に融解し、当日の新鮮精子を用いて顕微授精を行います。排卵後3日目に初期胚1個移植を行い、5〜6日目に胚盤胞になった胚を凍結します。判定陰性だった場合には、1ヶ月あけて自然周期にて胚盤胞移植を行います。これが、第1子と同じイメージになります。初期胚移植をしない場合には、すべて胚盤胞を目指しますが、5日目に胚盤胞になった場合のみ移植が可能で、6日目胚盤胞しかない場合は凍結し、後日の移植になります。
②卵子凍結は複数の卵子を一つのデバイスで凍結していますので、1個ずつ融解することはできません。2個融解し2段階移植ないし2個移植するか、1つのみ移植して残りの胚1つは再凍結するしかできません。受精卵は安定しているので、再凍結&再融解のダメージを考慮する必要はあまりありませんが、卵子凍結はやや不安定なので1回の凍結にしておきたいところです。
③その通りです。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。