☆PORにおける低用量hCG連日投与による採卵数改善効果 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、POR(卵巣予備能低下)における低用量hCG連日投与による採卵数改善効果を前方視的に検討したものです(パイロットスタディ)。

 

Hum Reprod 2023; 38: 716(デンマーク)doi: 10.1093/humrep/dead012

要約:2021年1〜7月にコペンハーゲン大学病院でART治療(体外受精、顕微授精)を実施するPOR(卵巣予備能低下)20名を対象に(平均年齢36.8歳、BMI 24.1、AMH 0.52)、低用量hCG連日投与による採卵数改善効果を前方視的に検討しました。卵巣刺激はアンタゴニスト法でrFSH300単位連日投与を行い、まず通常の採卵周期を実施し、全胚凍結しました(対照群)。次に260単位のrhCG製剤を8週間連日投与し、全く同じ卵巣刺激で採卵を行いました(rhCG群)。結果は下記のとおり(有意差ありを赤字表示)。

 

         rhCG群 対照群  P値

AFC(2~10mm) 8.6   7.9   NS

10mm以上卵胞数  7.3   5.3  0.02

採卵数       4.7   3.2  0.01

成熟卵数      3.5   2.6   NS

HCG       4.6   〜   〜

LH        6.8   6.7   NS

HCG+LH day 14 16.4   〜   〜

NS=有意差なし   

 

解説:卵巣刺激の前に男性ホルモン(外因性アンドロゲン)を投与すると、顆粒膜細胞のFSH受容体発現が増加し卵巣刺激の際のFSH製剤やHMG製剤に対する反応性が高まることが知られています。 LHとhCGは莢膜細胞からのアンドロゲン合成を増加させ、内因性アンドロゲンとして使用できることが報告されています。 本論文はこのような背景のもとに行われた前方視的検討であり、POR(卵巣予備能低下)における低用量hCG連日投与により、AFCは増加しなかったものの、採卵数が有意に増加したことを示しています。本研究はサンプル数がわずか20例のパイロットスタディであり、結論を導き出すためには、多くの症例数での検討が必要です。

 

最近HCGの色々な使い方が出てきていますが、これもその一つに追加されます。とても興味深い研究だと思います。