POI(早発卵巣不全、早発閉経)は家族性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、POI(早発卵巣不全、早発閉経)は家族性であることを示しています。

 

Fertil Steril 2023; 119: 128(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.027

要約:1995〜2021年に米国ユタ州の疾患データベースから396名のPOI女性を抽出し、少なくとも三親等内の親族までさかのぼってPOIの罹患率をユタ州のデータベースで調査しました。結果は下記の通り。

 

      調査人数   オッズ比(信頼区間)   P値

一親等   2,132名   18.52(10.12〜31.07)  0.0000000000001

二親等   5,245名   4.21(1.15〜10.79)   0.016

三親等   10,853名   2.65(1.14〜5.21)   0.013

 

解説:POI(早発卵巣不全、早発閉経)の定義は、40歳未満、4ヶ月以上自発性の月経なし、FSH>25 IU/L(4ヶ月以上あけて2回採血)であり、全女性の1%未満の罹患率とされています。本論文は、米国ユタ州の疾患データベースから、POIは家族性であることを示しています。フィンランドのデータでもPOIは家族性であることが報告されています(2022.6.14「POIの年次推移とリスク因子」でご紹介)。

 

早発卵巣不全(POF、POI)については、下記の記事を参照してください。

2022.6.14「POIの年次推移とリスク因子

2022.2.9「☆POIの出産率

2021.8.21「早発卵巣不全と非閉塞性無精子症に共通の遺伝子変異

2021.6.29「甲状腺自己免疫とPOIの関係

2021.3.10「早発卵巣不全の新たなマーカー:INSL3

2021.1.21「DORの原因遺伝子

2021.1.7「早発卵巣不全に対するIVAとLOI:ビデオ論文

2020.6.10「早発卵巣不全のMCM9遺伝子変異

2019.12.14「STAG3遺伝子変異による精子形成過程における減数分裂停止

2015.7.13「NGSでPOFの原因遺伝子検索

2015.5.13「☆POF(早発卵巣不全、早発閉経)の発生率

2014.5.14「早発閉経の遺伝子

2013.10.23「☆GDF9遺伝子変異でAMHが減少します