ガラス化法:ASRMの見解 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ガラス化法に関するASRM(米国生殖医学会)の見解を述べています。

 

Fertil Steril 2021; 115: 305(ASRM)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.11.017

要約:ガラス化法に関する見解を述べます。

1 卵子凍結および受精卵凍結の際に、常に一定の高い結果を出すために、ガラス化法のクオリティコントロールの尺度を設定し実施することが必要です。

2 ガラス化法の最適な方法、トレーニング法を設定することにより、有効性、一定性、信頼性、安全性を確保することができます。

3 現在のガラス化法はとても良い結果が出ています(欧米では、妊娠率は新鮮胚移植に匹敵します)。

 

解説:「ガラス化法」は、1985年に哺乳動物で初めて行われ、1997年にヒトの胚で成功しました。凍結による細胞のダメージは、氷の結晶が細胞内で生じることがその最大の原因であり、凍結保護剤を用いて細胞内の水分を少なくすることが必要です。「ガラス化法」で用いられる凍結保護剤は、細胞内透過性のある凍結保護剤濃度が2.3~3.2MのnVS1とnVS2、細胞内透過性のある凍結保護剤濃度が4.8~6.4Mで細胞内透過性のない凍結保護剤濃度が0.5~0.75MのVSからなっています。一方、「緩慢凍結法」で用いる凍結保護剤の濃度は1.5Mです。臨床への応用は、2003年頃から始まり、今では当たり前の技術になっています。日本は、凍結技術に関して世界のトップを走っており、諸外国を5年程リードしているといわれています。日本ではいち早く「ガラス化法」を取り入れたことがその最大の理由です。本論文は、ガラス化法に関するASRM(米国生殖医学会)の見解ですが、ありきたりの内容です。凍結法に限らず、クオリティコントロールはどの分野でも行われていますし、そのためのトレーニングも当然です。本論文は、欧米の凍結技術がまだ発展途上であることを物語っているように感じます。

 

下記の記事を参照してください。

2016.7.14「ガラス化法による凍結融解胚妊娠のお子さんの予後
2013.9.8「☆ガラス化法の安全性」
2013.1.19「☆☆凍結融解胚移植のすすめ」