☆男性因子がない方の顕微授精は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ
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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、男性因子がない方の顕微授精に関する検討です。

 

Hum Reprod 2020; 35: 583(英国)doi: 10.1093/humrep/dez301

要約:1991〜2016年の英国ART登録データベース(HFEA1,376,454周期の中で、男性因子、ドナー卵子、凍結融解胚移植、自然周期、PGT-Aを除外し、精液所見に問題のない自己卵の新鮮胚移植569,605周期を対象に、体外受精と顕微授精の成績を後方視的に検討しました。結果は下記の通りで、いずれも有意差を認めませんでした。なお、年齢、ART治療回数、出産歴、採卵数、移植時期、移植数などの交絡因子を補正したオッズ比で計算しました。

 

全体      体外受精     顕微授精    オッズ比(信頼区間)

周期数    272,433周期   297,172周期

受精率     64.7%      67.2%

受精障害率    4.8%      3.2%      

臨床妊娠率   31.4%      37.3%

出産率     27.2%      32.5%      1.00(0.98〜1.02)

 

採卵数1〜3個  体外受精     顕微授精

周期数     33,436周期   29,205周期

臨床妊娠率   14.8%      14.7%      1.04(0.97〜1.12)

出産率     12.2%      12.4%      1.03(0.96〜1.11)

 

解説:これまでの観察研究では、男性因子がない方でも、体外受精より顕微授精の成績が良好であることが複数報告されていましたが、ランダム化試験では体外受精と顕微授精の成績に有意差を認めていません。また、採卵数が少ないと顕微授精を行うことが多いのですが、本当に顕微授精が良いのかについては明らかにされていません。本論文は、男性因子がない方における体外受精と顕微授精の成績を国家規模のデータを用いて検討したものであり、採卵数が少ない方(1〜3個)も含めて顕微授精の優位性を認めなかったことを示しています。切り口を変えて過去にも同様な検討がなされていますが、全て同じ結論(体外受精と顕微授精は同等)です。ただし、同一患者さんで同じ時に採卵できた卵子を2群に分けた検討(siblingスタディ)が必要ですし、患者さんによっては異なる結果が出ることもあります。

 

下記の記事を参照してください。

2020.4.27「男性不妊でない38歳以上女性の受精方法

2018.7.18「非男性因子に顕微授精は有効か?

 

リプロダクションクリニック 東京公式ブログの下記の記事も参照してください。

2020.5.8「体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)は、どちらが"確率"が高いか(生殖医療解説シリーズ15)