両側漿液性境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存手術 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ
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本論文は、両側漿液性境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存手術に関する検討です。

 

Hum Reprod 2020; 35: 328(中国)doi: 10.1093/humrep/dez307

要約:1999〜2019年両側漿液性境界悪性卵巣腫瘍のために手術を実施した方94名(40歳以下)を対象に、術式と予後(癌の再発、妊娠成績)を後方視的に検討しました。術式は、両側嚢腫摘出術48名、片側嚢腫摘出+片側付属器(卵巣+卵管)切除術31名、両側付属器全摘出術15名であり、それぞれ32名(67%)、26名(84%)、3名(20%)が再発しました。術前のCA125>300、妊孕性温存手術実施、微小乳頭状所見がある場合に再発リスクが有意に増加しました。なお、14名が浸潤癌で再発し、3名が亡くなりました。妊娠を目指した49名のうち、23名(47%)で27妊娠が成立し(自然妊娠24、体外受精3)、19名の赤ちゃんが誕生しました。両側嚢腫摘出術と片側嚢腫摘出+片側付属器切除術の無病生存率と妊娠率(50% vs. 41%)には有意差を認めませんでした。

 

解説:漿液性境界悪性卵巣腫瘍は、境界悪性卵巣腫瘍の中で最も頻度の高い組織像であり、1/3は両側に発生します。近年、若年者で片側の場合には妊孕性温存手術がスタンダードな術式として実施されるようになりましたが、両側の場合には再発リスクも高く決まった方法がありませんでした。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、両側の場合にも妊孕性温存手術が可能であることを示しています。ただし、再発リスクが高いため、十分な術後の経過観察が必要であり、しっかり情報提供する必要があります。なお、術式は両側嚢腫摘出術も片側嚢腫摘出+片側付属器切除術も変わらないため、腹腔内の状況により対処できます。微小乳頭状所見がある場合には要注意です。

 

下記の記事を参照してください。

2020.1.5「☆癌治療の妊孕性温存:ASRMの公式見解

2019.3.27「癌のステージと悪性度による採卵成績と培養成績の違い

2019.3.5「☆小児癌生存者の妊孕性

2018.11.25「癌の種類によって卵巣刺激の反応が異なる!?

2018.8.17「抗癌化学療法や放射線療法の際の妊孕性温存:ASRMの見解

2018.5.7「癌患者さんの妊孕性温存には卵子凍結か卵巣凍結か

2017.10.14「採卵により乳癌の術前抗癌化学療法の遅延は起きるか?

2016.10.5「癌の種類によって卵巣反応が異なる?

2013.10.19「緊急体外受精とは?