大量の血性腹水合併の子宮内膜症 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、大量の血性腹水合併の子宮内膜症の腹腔鏡手術中のビデオを紹介したものです。

 

Fertil Steril 2019; 112: 1190(アルゼンチン)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.07.1398

Fertil Steril 2019; 112: 1057(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.09.006

要約:妊娠歴のない32歳の女性が腹部全体の腹痛と腹満で来院されました。2年前5Lの腹水のため、開腹手術を受け、腹膜子宮内膜症病巣の摘出と腹水除去を行っていました。その後、GnRHa治療により症状は落ち着いていましたが、自己判断により投薬を中止した4ヶ月後に上記の症状が出現しました。5Lの血性腹水を吸引し、帰宅しましたが、3週間後に再び同じ症状のため来院し、腹腔鏡手術を行いました。チョコレート色の血性腹水10Lを吸引すると、腹膜一面に壊死性組織が付着しており、至る所に癒着を認めましたが、鈍的に簡単に剥離できました。例えば、子宮、卵巣、卵管、S状結腸は癒着のため一塊となっており、肝臓、胆嚢、横隔膜も癒着のため一塊となっていました。壊死性組織を切除し、病理検査に提出したところ、子宮内膜症(子宮内膜腺と間質細胞)が確認でき、悪性所見はありませんでした。術後再びGmRHaを開始したところ、3ヶ月後の現在、再発は見られていません。

ビデオ:https://youtu.be/nEuBl3_EB0k

 

解説:大量の血性腹水合併の子宮内膜症は大変珍しく、これまでに37論文、42名の症例報告(4.2〜7.0L)がなされています。大量の血性腹水は悪性の場合に最も多いわけですが、悪性が合併する症例はもちろん除外されています。本論文は、大量の血性腹水合併の子宮内膜症の腹腔鏡手術中のビデオを紹介したものであり、壊死性組織の付着の状況や癒着の様子からは、間違いなく悪性を想定してしまうのですが、術中迅速病理診断で内膜症を確認したため、最小限の手術で終えています。この方は、GnRHaを続けていれば問題ないため、今後はずっとGnRHaを継続することになるでしょう(妊娠を目指す場合は採卵と融解胚移植が必要)。

 

大量の血性腹水合併の子宮内膜症のメカニズムとして、下記のものが想定されます。

1 チョコレート嚢腫の破裂とそれに反応した滲出液の漏出

2 腹膜の内膜症細胞からの滲出液の漏出

3 Meigs症候群同様に卵巣内因子活性化

 

コメントでは、大量の血性腹水合併の子宮内膜症は大変珍しいので、悪性だと早合点して全摘することのないよう、慎重に対処して欲しいとしています。