卵子活性化の有用性:カルシウムイオノフォア vs. ストロンチウム | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、卵子活性化の有用性(カルシウムイオノフォアとストロンチウム)についてのランダム化試験です。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1636(エジプト)doi: 10.1093/humrep/dey258

要約:2015〜2016年にエジプトの2施設において、18〜40歳の女性(BMI<31)で、過去2回の顕微授精での低受精率(<30%)、あるいは男性不妊(精子数<1000万)による初回顕微授精の方、合計343名を対象に、ランダムに3群(カルシウムイオノフォア群=Ca群、ストロンチウム群=Sr群、通常の顕微授精群=対照群)に分け顕微授精を行い、培養成績および妊娠成績を検討しました。なお、Sr群は10mMストロンチウムを1時間、Ca群は20分作用させました。結果は下記の通り。

 

         Sr群        Ca群       対照群

受精率    85%(1168/1377)67%(874/1310) 61%(720/1180) 

胚盤胞到達率 62%(722/1168) 51%(447/874) 46%(328/720)

臨床妊娠率  49%(56/115)  42%(48/113)  27%(31/115) 

出産率    40%(46/115)  33%(37/113)  18%(21/115) 

*いずれも対照群に対して、Sr群およびCa群ともに有意に高率

 

なお、前周期に低受精率だった方ではSr群の成績が有意に良好であり、男性不妊の方ではCa群の成績が有意に良好でした。

 

解説:受精は、精子が卵子の中に入り核が融合することです。まず、精子が卵子の外側の殻である透明帯を貫通し卵子細胞膜に精子が結合します。すると、精子のPLCζが卵子内のイノシトール1,4,5リン酸を産生し、イノシトールが小胞体に結合することで細胞内カルシウムを増加させます。カルシウムは卵細胞質内を波状に伝播していきますが、この現象をカルシウムオッシレーションと言います。カルシウムオッシレーションは前核期まで続き、この間に卵子の第2減数分裂再開、第2極体放出、精子核膜の崩壊~再凝集が起こり、この過程を卵子活性化と言います。卵子活性化がうまくいかない場合には、正常受精が起こりません。カルシウムイオノフォア(Ca)は、細胞膜のカルシウムイオンの透過性を亢進することにより、細胞内カルシウム濃度の増加をもたらします。一方、ストロンチウム(Sr)は、小胞体からのカルシウムイオン放出を促進します。どちらも顕微授精の際の補助技術として使用されますが、両者の比較を行ったランダム化試験はこれまで報告されていませんでした。本論文は、CaとSrの有用性を同時に比較した初めてのランダム化試験であり、卵子側の要因と考えられる場合にはSrが、精子側の要因と考えられる場合にはCaが有用であることを示しています。ただし、たった一つの研究だけでは結論づけることはできませんので、大規模なランダム化試験が必要です。

 

下記の記事を参照してください。

2015.8.3「卵子活性化の有効性

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