☆お子さんを亡くした後の妊娠率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


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本論文は、お子さんを亡くした後の妊娠率について検討したものです。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1557(デンマーク)

要約:1978〜2004年のデンマークの出生記録と1973〜2002年のスエーデンの出生記録の1,979,958名を対象に、女性年齢が45歳未満でお子さんを亡くされた方36,511名(1.8%)と、国、年齢、家族構成をマッチさせた対照群としてその5倍の182,522名を対象に、その後の妊娠について2008年まで経過観察を行いました(ケースコントロール研究)。観察期間に妊娠された方(妊娠28週以降まで妊娠継続)は、お子さんを亡くされた方(74%)がそうでない方(46%)より有意に高く、より早期に妊娠(特に最初の3ヶ月以内)され、出産率も5.5倍と有意に高くなっていました。また、この傾向は亡くしたお子さんの年齢とは無関係でした。さらに症例群と対照群で最終的な元気なお子さんの人数は同じでした。 

 

解説:近親者の死は、次の近親者の死の誘引となります。夫婦、親子、兄弟姉妹の場合に顕著であり、特にお子さんを亡くした親では心理的ストレスがより強くなることが知られています。このような心理的ストレスがあった場合に、妊娠率が低下する可能性が想定されるのですが、周産期死亡(妊娠22週以後の死産と生後 1週未満の新生児死亡)の直後はすぐに妊娠することが多く、1年以内に50〜60%の方が妊娠に至ることが報告されています。一方、それ以降の時期にお子さんを亡くした後の妊娠率についての検討はされていませんでした。本論文では、生後 1週未満の新生児死亡(49.1%)とそれ以降のお子さんの死亡件数はほぼ同数で、お子さんを亡くした後の妊娠率も極めて良好であることを示しています。

 

このような内容の研究は、どちらかといえばタブー視されがちですが、非常に重要な研究だと思います。一般に近親者の死がネガティブに作用する中で、お子さんの死だけは次のお子さんへの原動力(活力)になる可能性を示唆します。生まれ変わりのようなイメージでしょうか。その時はとても辛いでしょうけれども、辛い時期を乗り越えさえすれば、明るい家庭が築けることを示しています。ぜひ前向きになって欲しいと思います。

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