本論文は、無精子症の精巣組織のマイクロバイオームについて検討したものです。
Hum Reprod 2018; 33: 1212(イタリア)doi: 10.1093/humrep/dey116
要約:非閉塞性無精子症(NOA)でマイクロTESEにより精子回収できた5名と精子回収できなかった5名の精巣組織、対照群として精巣腫瘍のため片側の精巣摘出術を行った5名の精巣組織を用いて、マイクロバイオームの検討(QIIME法)を行いました。なお、精巣腫瘍の方の組織は、腫瘍から最も離れた部分の組織を用いました。対照群と比べNOA群のマイクロバイオームは有意に増加していました。対照群の主な菌種は、アクチノバクテリア、バクテロイデテス、フィルミクテス、プロテオバクテリアでしたが、NOA群ではバクテロイデテスとプロテオバクテリアが欠如し、アクチノバクテリアとフィルミクテスが多く認められました。NOA群の中で精子回収できた群と精子回収できなかった群の比較をすると、後者でアクチノバクテリアの有意な増加とフィルミクテスの有意な減少がみられました。また、後者でクロストリジアの欠如が認められました。
解説:今、マイクロバイオームのブームが来ています。ついに精巣でのマイクロバイオームの論文が発表されました。動物実験では、精巣での精子形成に周囲の環境が重要な役割を担っていることが示され、また腸内細菌が様々な疾患の発生に関連するという背景のもとに本論文の研究が行われました。本論文は、精巣組織のマイクロバイオームを調査した初めての報告であり、精巣内は無菌ではなく、無精子症の方では精巣のマイクロバイオームに変化が生じていることを示しています。まだ始まったばかりの研究ですが、様々な疾患でマイクロバイオームの研究が進みそうな予感がします。
マイクロバイオーム(フローラ)については下記の記事を参照してください。
2018.4.10「☆子宮内フローラ検査について」
2015.12.19「マイクロバイオーム」