本論文は、出産後あるいは流死産後の次回妊娠までの理想的な期間について検討したものです。
Fertil Steril 2018; 109: 840(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.019
Fertil Steril 2018; 109: 789(フランス)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.03.018
要約:マサチューセッツ州とミシガン州で2000〜2010年に出産した2,218,175分娩を対象に、過去の妊娠歴のある1,225,718件の前回妊娠から今回の妊娠までの期間(IPI)と今回の妊娠予後について検討しました。なお、前回妊娠で出産の場合と流死産の場合に分け、今回妊娠がART(体外受精、顕微授精)の12,633件とそれ以外の1,213,085件に分けて分析しました。また、妊娠予後の検討項目は、早産(37週未満で出産)、低出生体重児(2500g未満で出生)、胎児発育遅延(性別別の当該妊娠週数の10パーセンタイル未満で出生)としました。
前回妊娠で出産 IPI 早産 低出生体重児 胎児発育遅延
今回妊娠がART <12M 27.8% 17.5% 11.1%
12〜24M 22.2% 14.1% 9.7%
24〜60M 23.6% 15.7% 9.7%
60M< 27.9% 21.4% 12.7%
今回妊娠がART以外 <12M 8.3% 5.9% 7.8%
12〜24M 6.4% 4.4% 6.5%
24〜60M 6.9% 5.2% 7.6%
60M< 9.0% 7.8% 10.3%
*IPI 12〜24Mに対して有意差ありを赤字表示
前回妊娠で流死産 IPI 早産 低出生体重児 胎児発育遅延
今回妊娠がART <12M 25.9% 19.0% 12.7%
12〜24M 24.3% 18.3% 14.0%
24〜60M 29.2% 22.4% 15.5%
60M< 25.3% 24.1% 17.3%
今回妊娠がART以外 <12M 8.7% 5.9% 9.2%
12〜24M 9.6% 7.9% 10.6%
24〜60M 9.3% 8.2% 11.6%
60M< 10.7% 9.2% 11.6%
*IPI 12〜24Mに対して有意差ありを赤字表示
解説:出産後あるいは流死産後の次回妊娠までの期間が短くても長くても妊娠予後が不良になる可能性があるため、2005年にWHO(世界保健機関)は出産後2年、流産後半年以上の期間を空けることを推奨しています。しかし、その後発表された論文では、出産後12ヶ月未満と60ヶ月以上で、早産、低出生体重児、胎児発育遅延が有意に増加すると報告されています。本論文は、前回妊娠で出産の場合と流死産の場合に分け、今回妊娠がARTとそれ以外に分けて検討したもので、前回妊娠が出産の場合には出産後12ヶ月未満と60ヶ月以上で、早産、低出生体重児、胎児発育遅延が有意に増加することを示しています。しかし、前回妊娠が流死産の場合には60ヶ月以上のみで、早産、低出生体重児、胎児発育遅延が有意に増加しています。また、ART妊娠ではそれ以外の妊娠と比べ早産、低出生体重児、胎児発育遅延のリスクは増大します。したがって、WHOの推奨は変更すべき時期にきていると考えます。
出産後あるいは流死産後の次回妊娠までの期間が短くても長くても妊娠予後が不良になる理由として、次回妊娠までの期間が短いと子宮や卵巣やホルモンバランスなどが元に戻っていないため、次の妊娠の準備ができていないことが推測されます。逆に次回妊娠までの期間が長いと、女性の加齢による卵巣機能低下が大きく関わってくると考えられます。ご夫婦の家族計画を考える上で、本論文のデータは重要な情報になると思います。
下記の記事を参照してください。
2016.12.13「☆流死産後、次の妊娠までの理想的な期間は?」