Q&A1745 流産後、移植前の通水検査の意義は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妊娠3ヶ月で稽留流産し、術後の生理が約40日で来ました。通っている病院に、生理10日目に卵管通水検査を受けるよう言われておりましたが、これまで造影検査や子宮鏡で何も問題がなかったのですが、流産後の通水検査は必要なものなのでしょうか。通水検査なしで胚移植するのは妊娠率が下がるのでしょうか。
指導通り通水検査を予約しておりましたが父が他界し葬儀と重なりキャンセルしました。ひと月まって、通水検査から再開すれば良いのか、今後の動きを迷っています。通水検査後は最後の凍結胚5BB移植予定でした。心身共に不安定な時に貴重な胚を移植するのはやめておいたほうが良いのか、その場合、せめて自然妊娠の努力をしないと、現在42歳なので、たったひと月でも何もしないで過ぎて行くことに焦りがあります。自然妊娠を強く望むときは、3日連日や、一日置きに三度など聞いた事がありますが、タイミングをとるベストなスケジュールを教えてください。

 

A 流産後の移植前に行う卵管通水検査の意義は不明です。一方、子宮鏡検査は子宮内の修復具合や凹凸の有無を確認するという意味でメリットがあるでしょう。また、卵管造影検査は卵管水腫の有無を確認することができます。もしかすると、卵管回帰説を信じておられるる医師は、卵管通水検査の意義を感じているのかも知れません(受精卵は卵管に入ってから戻ってくるという仮説)。しかし、卵管回帰説には全く医学的根拠がありません。何故ならば、体外受精が開始した当初の適応は卵管因子(両側卵管閉塞や両側卵管切除後)のみでした。当初は胚盤胞へ育てる技術はありませんでしたので、全て初期胚移植でした。つまり、初期胚が卵管に戻ることなく妊娠していた訳です。

 

心身共に不安定な時に貴重な胚を移植するのはやめておいたほうが良いと思います。自然妊娠を強く望むときは、排卵日のことは全く気にせず、もちろん基礎体温も付けず、可能な限り毎日、少なくとも一日おきにタイミングをとることをお勧めします。

 

下記の記事を参照してください。

2015.10.31「Q&A871 卵管回帰説を信じた結果

2016.2.12「Q&A998 妊娠できなくて毎日辛いです

 

なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。