まずは人工授精から | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、まずは人工授精からの治療がお勧めであることを示しています。

Hum Reprod 2016; 31: 1141(英国)
要約:英国では、人工授精に600ポンド(約9.6万円)、体外受精に3200ポンド(51万円)かかります。妊娠率から計算すると、一人の赤ちゃんを授かるのために、体外受精は人工授精より43,375ユーロ(53万円)余分に費用がかかります。費用対効果を鑑みると、初回治療は人工授精に軍配が上がります。

解説:英国では人工授精の妊娠率が極めて高いことが知られています(平均13%)。これは、排卵の時間と精子を入れる時期を同期させていることが最大の理由と考えられます。すなわち、排卵のトリガーを用いた人工授精です。本論文は、費用対効果から、初回は排卵時間を合わせた人工授精のトライを推奨しています。

当院の人工授精は、英国と同様に、排卵の時間と精子を入れる時期を同期させています。この方法を取り入れている施設は、日本ではあまり多くないようです。体外受精に進む前に「確率の高い人工授精」の実施ををお勧めいたします。当院では、もちろんこの方法を採用しています。