ドナー精子の男性の年齢は出産率や流産率に影響するか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ドナー精子の男性の年齢が出産率や流産率に影響するかどうかを検討したものです。

Hum Reprod 2016; 31: 582(英国)
要約:1991~2012年ドナー精子(<45歳)による初回の人工授精(38,974名)あるいは体外受精(7,104名)を実施した方46,078名を対象に、ドナー精子の男性の年齢が治療成績におよぼす影響を検討しました。生産率は女性加齢につれて減少しましたが、男性の年齢は生産率に影響しませんでした。また、流産率も男性の年齢で変化しませんでした。

           生産率           流産率
女性年齢   人工授精   体外受精   人工授精   体外受精
18~34歳   11.1%    28.9%    1.3%     5.7%
35~37歳   8.3%     22.0%    1.9%     8.4%
38~50歳   4.7%     12.9%    1.9%     6.8%

解説:英国では、2012年と比べ2013年の同性愛の女性でのドナー精子による治療(AID)が30%増加しました。現在の英国のガイドラインでは、ドナー精子の男性を41歳未満(登録時)とする条件を適応しています。また、英国では2004年までドナー精子に匿名を許可していましたが、2005年以降は匿名性を廃止しました。これに伴いドナーの高齢化が起きています(31歳以上のドナー:28%→60%)。このため、ドナー精子の輸入が急速に拡大しています(2005年と比べ2013年で11%増)。このような背景から、男性の年齢は出産率や流産率に影響するのか、何歳をリミットにすれば良いのか、科学的根拠が望まれ、本論文の研究が行われました。本論文は、少なくとも45歳未満の男性であれば、ドナー精子の男性の年齢が出産率や流産率に影響しないことを示しています。

ただ、ひとつだけ注意が必要なのは、本論文はドナー精子の男性での検討ですから、精液初見が良い方しか含まれていません。したがって、不妊症のカップルでも同じことが言えるかどうかは不明です。たとえば、本論文のデータで不妊症の方と大きな違いがあるのは、流産率があまりに低いことです。これは、条件の良い精子ということでしか説明できないのだと思います。本論文の著者らは、ドナー精子の年齢制限をもう少し上げて、ドナー不足を解消したいとの考えです。

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