体外受精妊娠と自然妊娠のお子さんの発達状態の違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ
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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、体外受精妊娠と自然妊娠のお子さんの発達状態の違いについて検討したものです。

Hum Reprod 2016; 31: 100(フィンランド)
要約:1999年に妊娠された方を、お子さんが7~8歳になるまで、お子さんの精神状態と社会的および認知的発達状態について前方視的に追跡調査を行いました。体外受精妊娠255名と自然妊娠278名は、父親の年齢、婚姻年数、出産歴、出産時の在胎週数、NICU収容数を一致させ、2群間で比較しました。なお、精神状態はPRS-C(Parent Rating Scales)、社会的発達状態はSSRS(Social Skills Rating System)、認知的発達状態はFTF(parental questionnaire Five to Fifteen)のスコアを用い、お子さんの両親がスコアをつけたもので評価しました。体外受精妊娠と自然妊娠では、お子さんの精神状態と社会的および認知的発達状態に有意差を認めませんでした。しかし、男女別でみると、体外受精妊娠の男児(平均スコア1.28)自然妊娠の男児(平均スコア1.38)より認知的発達障害の問題をかかえるお子さんが有意に少なく体外受精妊娠の女児(平均スコア1.30)自然妊娠の女児(平均スコア1.22)より認知的発達障害の問題をかかえるお子さんが有意に多くなっていました。また、自然妊娠では女児よりも男児が社会的発達障害をかかえるお子さんが有意に多く認められましたが、体外受精ではこの差異は認められませんでした。つまり、認知的発達状態のスコアを多い順に並べると、自然妊娠の男児>体外受精妊娠の女児>体外受精妊娠の男児>自然妊娠の女児、となります。なお、体外受精妊娠の中では、IVFとICSIの有意な違いはありませんでした。

解説:これまで、体外受精妊娠と自然妊娠では、お子さんの発達状態や知能指数に有意差を認めまないと報告されていました。一方で、精神状態は体外受精の方が良いとする報告も散見されます。しかし、男女差も考慮すべきとの意見もあり、本論文の研究が行われました。本論文は、男女一緒に比較すると、体外受精妊娠と自然妊娠では、お子さんの精神状態と社会的および認知的発達障害に有意差を認めませんが、男女別にみると有意差を認めることを示しています。全体として、認知的発達障害は自然妊娠の男児に最も高頻度に認められるという結果でした。本論文は、男女別にお子さんの発達状態を比較する必要性を示唆しています。

認知的発達障害は認知症とは異なりますのでご注意ください。認知的発達障害は子どもの知能の発達の問題であり、認知症はもともと正常に発達した知能が低下した状態で高齢者に生じます。