Q&A586 ☆成長ホルモンの影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


テーマ:
Q 33歳、タイミング療法8回、中隔子宮、甲状腺腫(右葉切除)、橋本病
1回目のタイミングでは子宮卵管造影検査を行い、その周期で妊娠しましたが、妊娠8週で流産となってしまいました。それ以降は1度も妊娠に至っていません。
1つ気になる事があります。出生時、身長・体重ともに平均的でしたが、幼少期~学童期は身長が伸びず、学年で1番体が小さく、小学校4年生で120cmしかありませんでした。小学校4年生の時に小児科を受診し、成長ホルモンの注射を毎日していました。それまで1mm/年しか伸びなかった身長が7cm/年も伸び、中学校3年生で初潮を迎え、投薬治療は終了しました。
この成長ホルモンは、TSHと同じ下垂体から分泌されているホルモンと聞きました。卵子の質や妊娠継続・胎児の成長には関連性はないのでしょうか。成長ホルモン分泌不全は甲状腺疾患・不妊症・不育症の要因となると書かれている記事をどこかで読みました。成長ホルモンが足りなかったから注射で補充していた私。そのおかげで身長も伸びて、生殖機能もきちんと機能できたわけですよね。今現在、成長ホルモン分泌が正常に出来ているのかわかりません。もし関連性があるのなら、成長ホルモンの検査もした方がよいのでしょうか。また、不妊症から不育症まで広い観点での精査をした方がよいのでしょうか。

A 下垂体から分泌されるホルモンには下記のものがあります。
前葉
 卵胞刺激ホルモン(FSH)
 黄体形成ホルモン(LH)
 プロラクチン(PRL)
 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
 成長ホルモン(GH)
 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
中葉
 メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)
後葉
 オキシトシン(OXT)
 バソプレシン(ADH)

下垂体は、わずか1cmほどの小さな臓器ですが、身体全体の様々なホルモンをコントロールする司令塔です。子どもの時に成長ホルモンの分泌が低下すると低身長になりますので、成長ホルモンの補充療法が行われます。ただし、あくまでも低身長のための治療ですので、ある程度の身長になったところで治療を終了します。

最近、大人の成長ホルモンの分泌低下も様々な健康上の問題を引き起こすことがわかってきました。多くのホルモンを産生する下垂体ですが、下垂体がやられると成長ホルモンの分泌が真っ先に低下することが知られています。成長ホルモンは、肝臓、筋肉、脂肪に作用し、代謝を促進しています。したがって、大人の成長ホルモンの分泌低下により、コレステロール増加、インスリン抵抗性増加(糖尿病予備軍)、脂肪蓄積、筋力低下、発汗低下、骨粗鬆症、心機能低下などのリスクが増大します。しかし、大人の成長ホルモンの分泌低下の原因は、脳腫瘍や脳外傷、脳の手術によって起こるものですので、子どもの時の不足が関係しているのかは不明です。

また、卵巣機能が低下している方の体外受精を行う際に、成長ホルモンを排卵誘発剤(FSH、LH)と一緒に用いると卵胞発育が良くなるという報告があります。成長ホルモンは、身長だけでなく卵胞(卵子)の発育に関連していても不思議ではありません。ただ、成長ホルモン製剤は極めて高額のため、この治療は一般に行われているものではありません。

お話の内容からすると、一度成長ホルモン分泌不全症の専門外来を受診していただき、成長ホルモンを測定し、不足しているかを確認するのが良いと思います。ただ、年齢と経過からすると、タイミング療法をこれ以上続けるのは得策ではないように思います。早めのステップアップが望ましいと考えます。また、中隔子宮は流産の原因となりますので、手術が勧められます。

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