☆パラベンの影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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世の中にはたくさんの化学物質が存在し、私たちの生活(衣食住すべて)で使われています。通院中の患者さんからは、「この成分は大丈夫でしょうか?」という質問がしばしばありますが、正直なところ調べてみないとわからないことが多いです。今回ご紹介するのは、飲料、化粧品、食品、医薬品の「防腐剤」として使用頻度の高い「パラベン」についてです。

J Expo Sci Environ Epidemiol 2013; Oct 23(米国)
要約:177名の妊婦の尿中のパラベン(ブチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベン)、フタル酸(モノブチルフタル酸、モノエチルフタル酸)の濃度を測定しました。過去12時間以内に使用した、ローション、化粧品、香水とパラベンおよびフタル酸には大きな相関を認めました。使用した商品によって濃度は大きく異なり、ローション使用者は未使用者と比べ、ブチルパラベン濃度が111%高く、モノブチルフタル酸濃度は28%高くなっていました。一方、香水使用者では未使用者と比べ、モノエチルフタル酸が167%高く、ブチルパラベン濃度は同等でした。パラベンおよびフタル酸の濃度とローション、化粧品、香水それぞれの使用量には用量依存性を認めました。

Environ Health Perspect 2012; 120: a437(米国)
要約:2005~2010年に米国の4カ所から、男性245名、女性408名の尿サンプルを得て、パラベンの濃度を測定しました。プロピルパラベンおよびメチルパラベンはしばしば同時に使用されており、95%以上の方から検出されました。プロピルパラベンおよびメチルパラベンの濃度は、男性と比べ女性で4倍、白人と比べ黒人で3倍の濃度を認めました。一方、ブチルパラベン濃度は、男性と比べ女性で4倍ですが、白人と黒人に差はありませんでした。女性は、使用する化粧品類を変えると、尿中パラベン濃度が変化します。

Reprod Toxicol 2013; 35: 96(日本)
要約:111名の妊婦の尿中のパラベン(ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン)の濃度を測定しました。エストロゲン作用は、プロピルパラベンで最も高く他の3種類と比べ20倍でした。男児の生殖器(肛門~ペニスの距離)には有意な変化はありませんでした。

Environ Toxicol Pharmacol 2014; 37: 705
要約:ブチルパラベン妊娠7日目から産後21日目までラットに投与(0, 64, 160, 400, 1000 mg/kg/日) しました。オスの子どもでは、肛門~ペニスの距離が短縮し、ペニス包皮の分離が遅くなりました。精巣、精巣上体、精嚢の重量およびテストステロンが減少し、エストラジオールが増加しました。LH、FSHは減少後、増加しました。また、精子形成はブチルパラベンの用量依存性に減少しました(400, 1000 mg/kg/日で有意差を認める)。

解説:「パラベン」とは、パラオキシ安息香酸エステル(para-hydroxybenzonate)類の総称であり、それぞれの静菌作用が異なることから、何種類かのパラベンが同時に使用されます。

パラベンの抗菌活性の強い順に並べると下記のようになります。
ベンジルパラベン
ブチルパラベン
プロピルパラベン
エチルパラベン
メチルパラベン


パラベンは、飲料、化粧品、食品、医薬品などに用いられるため、皮膚、唇、眼、口腔内、爪、毛髪から吸収されます。米国では92%の方の尿中にパラベンが検出されます。パラベンにはエストロゲン作用が存在するため、環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)と同様の懸念がありますが、世界各国では通常の使用量では問題ないとしています。しかし、その根拠となるデータは、1種類のパラベンに暴露した場合のデータであり、複数のパラベンに暴露する現状とは隔たりがあります。また、パラベンには胎盤通過性があり、胎児も同時にパラベンの暴露を受けています。これまで、パラベンは安全であると考えられていましたが、女性ホルモン様作用(環境ホルモン)の観点から現在様々な研究が勧められており、男性不妊、女性不妊や胎児への影響が懸念されます。現在ある証拠は決して十分とは言えませんが、注意が必要な物質と考えます。

一方、パラベンfreeをうたった防腐剤も多数使用されていますが、これらについても単にパラベンがないというだけで、防腐剤には違いありません。それぞれの防腐剤の安全性(精子、卵子、妊娠中、胎児)が確認されたわけではありませんので、ご注意ください。

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