☆☆基礎体温測定の意義は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


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次のような質問がありました。この質問に限らず、基礎体温に関する質問は、通院前の方や一般妊娠治療をされている方からしばしばあります。

Q 基礎体温ですが二段階で高温期に入ります。例えば、36.20が最低温期としたら36.4→36.6といった感じです。排卵はしていると考えて良いのでしょうか。しているとしたら、やはり低温の日でしょうか。

A 基礎体温に関する論文はあまり多くありません。特に最近の論文はほとんどありません。その中から比較的新しい2つの論文をご紹介したいと思います。

Obstet Gynecol. 1994; 84: 307(レビュー)
要約:尿中のLHサージをみる排卵検査薬を使用したタイミング法がしばしば用いられますが、排卵検査薬により妊娠率が増加するという報告はありません。それどころか逆に「この日にしなければならない」というストレスが男女ともにかかることが証明されており、これにより正常な性機能が障害され、かえって妊娠しにくくなるのではないかと考えられます。また、基礎体温や生理周期から最も妊娠しやすい時期を予測すると、かえって妊娠する時期のタイミングを逃すことが報告されています。むしろ、最低週1回性交を行うといったタイミングの取り方の方が、男女のストレス軽減効果があるばかりでなく、妊娠率も増加します。

Obstet Gynecol 2002; 100: 1333(レビュー)
要約:基礎体温や生理周期から妊娠しやすい時期を判断しても妊娠率は増加しません。一方、超音波検査による卵胞発育で妊娠しやすい時期を予測すると妊娠率が増加します。尿中のLHサージをみる排卵検査薬により排卵日の予測はできますが、妊娠率は増加しません。これは、タイミング法での妊娠しやすい時期が排卵日ではないからです。

解説:私は、基礎体温の測定を必須にはしていません。基礎体温から得られる情報が少ないためです。医学的には「体温の高低差が0.3度以上あれば排卵があったと推測できる」という意味で基礎体温を見ています。基礎体温から排卵日を予測することも、振り返ってどこが排卵日だったか特定することもできません。また、人間の身体は機械とは違いますので、必ずしも正確に計れません。特にお子さんがいらっしゃる場合には、まず正確な基礎体温の測定は不可能でしょう。さらに、基礎体温を毎日測定するという行為自体が「精神的ストレス」になり、妊娠を妨げる可能性があります。

2013.10.29「☆自然妊娠を目指す場合のポイント:米国生殖医学会公式見解」でご紹介したように、妊娠しやすい時期は排卵の4日前~排卵前日の4日間(排卵日と排卵5日前は同等に低い)であり、排卵日ではありません。また、この時期の頻回の性交が妊娠率増加につながります。そのため、排卵日を特定できる排卵検査薬を用いた場合は、陽性になった翌日が排卵日と推定できますので、陽性に出た日のみの性交のチャンスしかありません。一方、卵胞検査では、5日くらい前から排卵日の予測をすることができます。以上をまとめると、次のようになります。

        排卵日の予測   排卵日の何日前に予測可能か   妊娠率 
週1回以上性交    ~           ~          ~ or ↑  
基礎体温      不可           ~         ~ or ↓
排卵検査薬      可          前日         ~ or ↓  
超音波検査      可         約5日前          ↑

つまり、排卵日は前もって予測することに意義があります。そうでなければ、予測しない方がよいわけです。

下記の記事も参考にしてください。
2012.9.18「☆タイミングの取り方間違ってませんか?」
2013.1.23「☆☆☆不妊クリニック通院前にして欲しいこと」

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