松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


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2013.11.7「☆亜鉛と不育とプロテインS その1」では、プロテインSのお話がひとつも出てきませんでした。今回は、亜鉛とプロテインSのお話です。

FASEB J 2009; 23: 2244(米国)
要約:プロテインSは活性化プロテインCと結合して、活性化第V因子と活性化第VIII因子を不活化し、トロンビン産生を抑制します(間接経路)。活性化第V因子と活性化第VIII因子は血液凝固カスケードの最終段階にあるため、ここをブロックできないと血液凝固が際限なく進みます。この経路とは別に、プロテインSは活性化第X因子に結合してトロンビン産生を直接阻害する経路があり(直接経路)、これは最近発見されました。直接経路には亜鉛が必要ですが、間接経路に亜鉛は不要です。亜鉛の存在下では、プロテインSは活性化第X因子に強力に結合しますが、TFPIへの結合に亜鉛は不要です。直接経路を妨害する抗体は、亜鉛存在下のプロテインSに結合することから、亜鉛が存在すると、プロテインSの構造変化が生じることが示唆されます。

解説:ここで述べたプロテインSの経路は、
間接経路:プロテインS+活性化プロテインC 亜鉛(ー)→活性化第V因子↓、活性化第VIII因子↓→トロンビン↓ 
直接経路;プロテインS+活性化第X因子 亜鉛(+)→トロンビン↓ 
であり、間にワンステップあるかないかの違いです。このステップがない方が素早くトロンビンを低下させることができます。トロンビンは血液を固める物質です。すぐに分解されてしまいますので、トロンビンそのものを測定することはできません。トロンビンが分解された最終生成産物であるTATを測定し、血液凝固亢進状態にあるか否か判断します。

血液凝固に関与するたんぱく質には多くの物がありますが、血を固める方向のもの(アクセル)血を溶かす方向のもの(ブレーキ)の2つに分類すると、前者のものが圧倒的に多く、後者のものは少なくなっています。動物は、外敵からの攻撃に対する防御反応が重要で、出血を止めケガを治す仕組みが発達しました。また、お産の際には大量に出血することがしばしばあり、それに対処するために、妊娠中は特に血液凝固が強く働くような仕組みになっています。この仕組みがより強く働いてしまうことが不育症のひとつの要因になります。血液凝固でのブレーキは、プロテインSとプロテインCしかありませんブレーキが効かなくなると、血液凝固が暴走します。全く効かなくなると身体中に血栓ができますが、弱く効かなくなると子宮や胎盤で血栓ができます。

本論文から、亜鉛が不足すると、プロテインSのブレーキ機能が減少することが推測されます。詳細は、今後の検討を待たねばなりませんが、非常に興味深いストーリーです。
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