松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


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何度も体外受精がうまくいかない時にどのように考えるか。アメリカ生殖医学会(ASRM)から興味深いコメントがありましたのでご紹介します。コメントとはいえ長い論文なので、何回かに分けてご紹介します。

Firtil Steril 2012; 97: 1033
要約:「何%くらい妊娠しますか?」と患者さんから訊かれた場合に、私たちはその患者さんの過去の治療成績他の患者さんの治療の統計データを基に話をします。世の中には多くの統計があります。その患者さんの状態に最も当てはまるケースを参考に、類似点や相違点をそれぞれ加点や減点して確率を推測します。しかし、まだ妊娠に成功していない患者さんは、いったいいつ妊娠するのか、いつまで続ければよいのかを聞きたいのであって、いくら客観的な統計データを示しても、気を紛らわすことにも、気休めにもなりません。
 妊娠判定で(+)か(—)かがどのような原因によるのかは、天気が晴れか雨かと似ています。天気はランダムではありません。雨がいつ降るのか、暖かいのか寒いのか、晴れか曇りか、風が強いか弱いか、これらは様々な条件や要因によります。気象学は、過去のデータを洗練されたモデル化し、現在の状況と照らし合わせて予報し公表します。私たち生殖医療に携わる者が、患者さんに胚移植の際の妊娠率をお話しすることとまさに同じアプローチです。
 気象予報士が「65%雨が降るでしょう」と言って、雨が降っても驚きません。「35%は晴れるなら十分満足」だと思います。1日の予報だったら、結果がハズレても当たってもどちらでもあまり気になりません。では1日の予報ではなく1週間ならどうでしょう。降水確率65%でせっかくとった1週間の有給休暇が毎日雨だったら、「この天気予報は一体どうなってるの?」と天気予報の精度を疑うでしょう。3日に1日は晴れの確率だからです。「2日くらい晴れたってよいのに」と思います。このように、1日なら許容できても1週間なら許容できないのは人間の性だと考えます。1週間の連続した雨が予測できないことは、天気予報のシステムにまだ不足しているデータがあることを意味しています。そのデータがないから予報が外れてしまったわけです。
 体外受精の妊娠率を予測する場合には、私たちは「卵の質」「精子の状態」「胚の発生」「子宮内膜」「ホルモン状態」「女性の年齢」「AMH」などから妊娠予測をします。妊娠予測35%だったら、3回移植したら1回妊娠するはずですが、7回移植しても妊娠しないこともあります。「このクリニックどうなの?」とクリニックの技術を疑うか、「私の身体は妊娠できない身体なの?」と自分の身体を疑うかのどちらかでしょう。連続して体外受精が失敗してしまうことは、「その他に不足している要因」があることを意味しています。「その他」の要因として考慮すべきものとして、次の7つが考えられています。「その他」の要因が解明されれば、天気予報も妊娠率も格段に進歩するはずです。
1 肥満
2 タバコ
3 子宮筋腫
4 子宮奇形
5 甲状腺機能異常
6 胚移植のテクニック
7 免疫因子と易血栓性


次回からは、この7項目をひとつずつ解説したいと思います。

解説:上に掲げた「その他」の要因の中で、1と2は生活習慣、3と4は子宮因子、5と7は血液の状態、6は医師および培養士の技術となります。わからないことだらけですから、ひとつずつ潰していくしかないと思います。これ以外の要因ももちろん考えられますから、全部クリアしてもまだ妊娠できないということも十分あり得ますが、このような積み重ねによって、医学が進歩していきます。
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