AMHとビタミンDの関係 その3 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

AMHとビタミンDの関係についての論文を探していたところ、興味深い論文を目にしました。本論文は、体内のビタミンD濃度が高い女性で、体外受精の妊娠率が高くなることを示しています。ビタミンDは脂溶性ビタミンですから、過剰摂取はいけませんが、採血して低下していれば補充することを考慮したいと思います。

Fertil Steril 2010; 94: 1314
要約:体外受精の際に採取した、84名の女性の血液と卵胞液(卵子の袋の中身)に含まれるビタミンD(25ヒドロキシビタミンD)の濃度を測定しました。血液と卵胞液の濃度は相関しており、白人や肥満でビタミンD濃度が低く、妊娠した群でビタミンD濃度が高くなっていました。人種、体型、年齢を補正したところ、卵胞液のビタミンD濃度が 1 ng/mL高くなると、妊娠率が6%増加することがわかりました。

解説:本論文が投稿されたのは、AMHとビタミンDの関係が明らかにされるより前です。そのため、AMHに関する記載は論文内に一切ありません。これまでに、ビタミンDの受容体が子宮、卵巣、精巣、胎盤に存在することがわかっていましたし、ビタミンDが欠乏した動物では妊娠しにくいことなど、ビタミンDが妊娠に関係するのではないかと考えられていました。着床に必要な遺伝子として子宮内膜のHOXA10が最近見つかりましたが、その発現にビタミンDが関与することもわかっています。つまり、ビタミンDは、卵巣(AMH)、子宮(HOXA10)には少なくとも関与して、妊娠にプラスに働きます。