あの子が亡くなる前に受診したという心療内科で

診療記録開示請求を行った。 



記録によると

受診は2回だけ



初診は2ヶ月前


眠れない、なんとなく不安


リーゼ1ヶ月分処方

1ヶ月後の再診を指示


再診に訪れたのは

命を絶つ2日前だった。


手足が鉛のように重い

食欲がない

胸が苦しい

涙が止まらない



医師の診断は「中等度うつ」

ロラゼパム、リフレックス錠等処方

在宅精神療法

2週間後に来るように指示




受診の翌々日、あの子は

消えるようにいなくなった



カルテには

「自殺完遂により警察の聴取に回答」

と締められている。







「初回は、とても明るい感じでした」


男性医師は低い声で

言葉を選びながら語った。


「2度目は、ずいぶん印象が変わったなと思いました。顔色悪く、涙を流していて・・・」

「傾聴することにより

その日は落ち着いたように見えたのですが」


医師の声をどこか遠くで聞きながら

固く握ったグーの手が

膝の上でカクカク震えた。



ここはあの子が、涙を人に見せた

最初で最後の場所


ふうちゃん


あなたは最後まで生きようとしていたんだね。

救いを求めて受診した。


そのことが分かったから

あなたのすべてを

お母さんが引き受けないとね。




医師の遺憾そうな表情に

言葉にならないお辞儀をして

病院を後にした。