このご時世、NYに憧れてそこで仕事をしたいと思う人は随分少なくなった事だろう。異常な速度で上昇した物価、不法移民の氾濫に寄る治安・秩序悪化等、現政権下で実施された施策で生活環境が悪化したどころではないようだ。こうした現状に伴ってか、最近の全米対象の求人募集広告を見ても、CA州とNY州でのそれが増えているように思えるのは私の勘違いだろうか。
私の世代で、また田舎者で裕福でない家庭出身である身で、旅行でNYへ行くなんて贅沢な事はとても想像が出来なかった。ましてやそこで仕事をする事なんて全く考えてもいなかった。
どのような経緯でその仕事に就いたか、今となっては殆ど記憶にない。
とにもかくにも、ある年の夏私はニューヨークのマンハッタンでの仕事にありついた(?)
ニューヨークでの思い出は沢山ある。半年という短い期間であったが、本当に色々な経験をする事が出来たが、今は仕事の話に限って書いてみたいと思う。
部署は総務部企画室。人員は3名。日本人駐在員マネジャーと現地採用の日本人女性財務関連マネージャー、そして私。私は2名の補助的な仕事に就く。社長、副社長の秘書室的な存在だ。
この会社は日本でも有名な商社でニューヨーク支社での勤務となれば、超エリート、良家出身者の駐在員が殆どで、その上勿論皆さん、非常に優秀な方ばかりであった。いつも立派なスーツや靴、鞄という出で立ちで、その雰囲気は兎に角超一流。冬はバーバリーのコートを羽織り、グループで近くのレストランで夕食を取ったりする。
オフィスはダウンタウン・ニューヨークの一角にある高層ビルの上階にあり窓からはハドソン川が見下ろせ、カフェテリアからはあの有名な世界貿易ビルが建っていた辺りが見渡せる。
初日、少し残業を頼まれて会議資料をまとめているとニューヨークの夜景・摩天楼がとても美しく目に飛び込んできた。
「私もとうとうここまで来れたのか。。。」と感慨にふけた事を思い出す。
当時ではめずらしく、月次会議は世界8か国から先鋭かつ切れ者支店長が一斉に揃いサテライトで同時会議。今思い出しても周りがキラキラとした雰囲気に包まれており、皆さん自拠点の報告をそつなくこなす。勿論、バイリンガルとは行かなくても立派なビジネス英語でスラスラ~っと。
”すごい!!カッコ良すぎる!!”
と内心叫び、武者震いする程の雰囲気があった。良い大学を出ているだけでなく、皆さん優秀である上に本当に仕事を良くこなしていらっしゃった。会社のM&A検討・実施業務なんてごく普通の事で私にとっては別世界であった。
さて、私と来たら・・・
まだ仕事に慣れない頃、ある連絡事項の展開つまりグループメールの送付を上司である駐在員マネージャーから指示された。私の自己紹介も含めて、彼なりに気を利かしてくれたのだろうと思う。
ところが・・・である。
グループメールの宛先に、同姓の別人が入り込んでいた・・・という初歩的なミスを犯してしまった。 そこから、私の地獄のような毎日が始まった。。。
職場での私の存在を完全に無視される。周りの人ほぼ全員にだ。
例の月次会議ではカメラ装置の準備・操作係。会議資料の作成等全く仕事を与えられなかった。私が机につくと、わざとそれまでの会話を途中で止めたりするという毎日が続く。精神的な嫌がらせ行為が続く。
しばらくして私は歯がボロボロになるという状況に陥り、精神的、肉体的に業務遂行が難しくなってしまった。それで、当時の状況をHRに打ち上げた。内部調査が始まった。言うまでもなく、状況が改善しないと報告すると、今度は外部の第三者弁護士2人が私に面談をして来た。
結果? 言うまでもなく、「コンプラ違反の行為・言動の証拠は何も見つからなかった」と
言われ解雇を言い渡された。
始まりはあくまでも私のミス。だから仕方がないと言えば仕方がない。。。
私の言い訳はこうだ。米国労働法の下では、業務ミスの1つや2つで直ぐには解雇出来ない事になっている。”業務上のある程度のミスは上司の注意と指導対象で改善の余地・時間を与えるのが解雇を正当化するまでの’あるべき姿’のはずである。”
ただ、決めてとなったのは、私が送ってあった抗議のメールの一言であった。私は職場でのメールの言葉の選択には非常に慎重な方であるが。
その一言とは、
”(限度を超えたハラスメントや間違った処遇に関しては)あくまでも闘い続けます。”
この”闘う”という単語。英語では’fighting'であるが、この単語はビジネス場面で使用されると
’脅し’として取られ、立派に解雇の理由になると言う。
そんな事まで、知っているはずがないじゃない!!
ただ、私の状況を気の毒に思ったのか、同じような理由で何人も解雇者が出ていたという背景を考慮したからか、HRからは
”試用期間での解雇だから、履歴書に傷がつかない。”と説明を受けた。
短い間だったけれど、超エリートの職場を経験、垣間見る事が出来た。一筋縄では行かない世界。一つのミスが部署の、会社の業績に関わる事もあるのだろう。
単純に言うと、私には色々な意味で能力も経験も心構えも足りなかったのだと思う。
でも、だからと言ってあそこまで嫌がらせをする必要があるの?とも思う。(ひぇ~ん)
まあ、少なくとも歯を全て抜く事は免れたという事は不幸中の幸いだったのかもしれない。。。