師走の風のなか


我が子を亡くした母ふたり


亡き娘の面影を抱き締めて


ディズニーシーを訪れた



私は自死で娘を喪い


もう一人の母は


悲惨な事件で幼い命を奪われ


お互いの親交は早六年


私達は親子ほど歳が違う


彼女は私を


「お母さん」と呼んでくれる


菜穂と二歳違いの彼女は


とても美しく可憐なひと


時折菜穂の姿と重なる彼女


お互いの子供達との


シーで過ごした思い出や


アトラクションの話しをしながら


沢山の人混みを足早に通り抜け


思い出の上書きをした



菜穂を喪い得たものは


同じ悲しみを生きる母との交流


何も語らずとも解りあえる


心友とのひととき


この世でひとり、子を亡くし


その後ひとり、子を授かった


血の繋がりは無いけれど


心は強い絆で結ばれた


「ふたりの母」という絆で



他人が見れば私達は


元気な母子に見えるだろう


屈託の無い笑顔も


年甲斐もなくはしゃぐ姿も


心の奥深く流れている


冷たい涙の川を誰も知らない



亡き子へのお土産に


沢山のぬいぐるみを選び


束の間の癒しの時を離れて


思い出の上書きを終え


お互いの町へと帰る


母ふたり


晴れ渡る青空は


我が子がくれたプレゼント



次の約束はまた一年後


遠い先の約束だけど


その日までは生きよう、と


頑張れる私達だから


今度は


私達の思い出を作ろう


新しい思い出を


いつか彼方へ逝った時


あの子達へ語れる思い出を